感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
8
同時代から戦後までの芥川龍之介論が収録されたお得な一冊。芥川評価というのは、ちょうどマルクス主義等の擡頭によってすぐに時代遅れになった新カント主義のような運命を辿ったらしい。頭の中だけで小説を書く書斎人の文学で、「生活」に密着してない。技術はあるけど内容がない。芥川自身も自らを「生活的宦官」と思うところがあって、これが彼の自殺にもつながっていく。時代はこれを書斎的文学者の敗北宣言として受け止めた。話作りが上手ければそれでいいじゃないかと思うんだけど、日本では文学は作家自身の一人称の告白が求められたらしい。2024/05/15