内容説明
夢幻能とは世阿弥によって創始された能のジャンルの一つである。本書は世阿弥自筆の能本から能作の過程を考察するとともに、“江口”“清経”など具体的な作品の題材、内容、構成を丹念に検証することにより、夢幻能の世界を浮彫にした力作。
目次
第1部 世阿弥自筆能本の形態をめぐって(世阿弥自筆能本における登場人物の役表記をめぐって;世阿弥自筆能本“江口”本文考―料紙の継ぎ目と改行をめぐって;状と冊―世阿弥自筆能本の体裁について)
第2部 能と先行文芸(『伊勢物語』古注釈の方法―各小段の「女」の実名を中心に;「夢幻能」への道―経文・説話・絵伝における「夢」;「本説」考―世阿弥能楽論を中心に)
第3部 夢幻能の方法(“江口”の方法―普賢菩薩を「観る」奇特;“清経”試解―げにも心は清経が仏果を得しこそ有難けれ;『伊勢物語』古注釈と世阿弥自筆能本“雲林院”の後場をめぐって―二条后像の造形 ほか)
著者等紹介
飯塚恵理人[イイズカエリト]
1961年7月アメリカ合衆国シカゴ市生まれ。1991年3月筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科単位取得。1991年4月椙山女学園大学生活科学部専任講師。1994年4月椙山女学園大学生活科学部助教授。2000年4月椙山女学園大学文化情報学部助教授(現在に至る)。2000年10月江馬賞(日本風俗史学会)受賞
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感想・レビュー
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世阿弥図書館本シリーズ19冊目。現椙山女学園大学教授、飯塚恵理人さんの大学院生の頃から14年ほどにわたる時期の論文集。どこかで聞いたような名前と思ったら、能楽の音源や資料などを公開しているサイト「恵理人の小屋」を作っておられて、以前検索したことのある方だと分かりました。HPの「飯塚家の家訓」が最高ですが、この論文集の緻密なお仕事ぶりをみると、お仕事には厳しい方かと想像しています。本の半分を占める資料編の翻刻にどれほどの時間がかかったか、それを思うだけで気の遠くなるような力作です。2021/09/21