内容説明
かつて「天国にとっていちばん近いクライマー」と呼ばれた男はなぜ、死ななかったのか。
目次
第1章 「天国に一番近い男」と呼ばれて
第2章 パートナーが教えてくれたもの
第3章 敗退の連鎖
第4章 2000年以降の記録より
第5章 危機からの脱出
第6章 アンデスを目指して
著者等紹介
山野井泰史[ヤマノイヤスシ]
1965年東京生まれ。単独または少人数で、酸素ボンベを使用せずに難ルートから挑戦しつづける世界的なクライマー。10歳から登山を始め、高校卒業後、数々のクライミングを実践。1990年、フィッツ・ロイでの冬季単独初登攀を成功させる。1994年、チョ・オユー南西壁を単独初登攀。2000年にはK2の南南東リブを単独初登攀。2002年にはギャチュン・カン北壁登頂後、悪天候のなか奇跡的に生還する。凍傷のため手足の指を計10本失うが、2013年にアンデスのプスカントゥルパ東峰南東壁を初登攀(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
138
「生きていることが不思議だ」と言われる著者が死なずに充実した登山人生を歩むためのヒントを思索する。より登山家向けの内容で専門用語も多いのだが写真が豊富なので彼の世界に迫りやすい。若い頃の大言壮語が並ぶインタビューや90年代後半の無謀な登攀に注目するとギャチュンカンのような事態は早晩起きていたと思うが、自らの能力と登攀好きをより自覚させた点で意義がある。熊に襲われて鼻呼吸が出来なくなったのは不運だが、困難が増えても「自分の能力とぴたりと合った」目標を探して挑む気概こそが彼の人生の充実に繋がっていると感じた。2021/08/13
むーちゃん
107
読了。トレイルラン初心者ですが、冬の山は本当に怖いところなんでしょう。私には行けないし、行こうとも思わない。筆者は、死と向き合って、ヒリヒリしたスリルを得て生を感じる。 まさに、本能のままに、生きてこられたのかな。 全く持って良い意味でクレイジーです。 奥様も含め、指ほとんど失っても止めないって😱2021/09/15
hatayan
70
日本を代表する登山家が心に残る山を回想。 周りの山仲間が命を落としていくなかでも死なずに生き残れたのは、若い頃から恐怖心が強く危険への感覚が麻痺することがなかったからだと分析。著者は2002年のヒマラヤの高峰を登攀中に雪崩に遭い、眼球を凍らせ10本の指を切断する深手を負いますが、3年後には復活。肉体の衰えを感じ始める40代に一瞬で子どものような弱い肉体になったので、リハビリでわずかずつ進歩を実感できているとあくまで前向き。逆境でも柔軟な思考を保てたからこそ、著者は生き残ることができたのではないでしょうか。2020/07/25
ニッポニア
62
登らない私からすると「なぜ登るの」と浮かびますが、理由など考えていないのかもしれません。高い所に行く本能に突き動かされて。以下メモ。岩登りでは下半身に乳酸を溜めないことが大切、瞬発力よりも全体に力を配分するバランス。一枚の写真から心を掻き立てられる、ガイドブックの星印から、など山を選ぶ時間が楽しい、準備最高説ですね。凍傷で指を失うが、下山に必要な人差し指と親指は残しておこう、という判断。なんという過酷な環境に自らの体を置いて、もがくのか、やっぱりわからない。2024/04/06
kinkin
57
図書館本。一気読み。著者のことはテレビや沢木耕太郎著「凍」などで知っていた。 内容はやはり、山ずくし。彼にとって山とは人生だというよりも、彼は山の一部なんだろう。凍傷で手足の指を失くし、熊に顔を噛まれて大怪我をしてもまだ山に固執する。この本には山岳の専門用語も多く調べぬまま読みすすめたが、アルピニストの知り合いがいたとして、そのアルピニストならどんな気持ちで読むのかが気になった。「最悪」という状況に対応するには情報よりもそれに対する心構えが大事とも書かれていた。よい言葉だと思う。2015/03/20