内容説明
一周早いほどの差をつけて駆け続けたが、最終コーナーでいきなりトラックの外に押しやられた長距離走者のような目にあって、田沼意次は七〇年の無念の生涯を閉じた。しかし、一代で田沼家を大名家に引き上げ、転落はしたが子孫が大名家として持続し、明治の貴族に列したのは、意次のおかげである。みずからを語ったわずかな史料のていねいな読み込みと、社会情況の遠望を組み合わせて、田沼意次とその時代をどう見ればよいかを論じてみたい。
目次
田沼時代という呼び方
1 田沼意次の降魔祈祷(「人格的範疇」について;天明7年5月15日の降魔願文 ほか)
2 江戸城政治家の転身決意(重陽の節句の家中教諭;近世大名であることの要件 ほか)
3 大名田沼家の家法作成(家法の作成と全文;築城までの栄達 ほか)
4 田沼時代と近世の商業革命(研究史の宝暦~天明期像;商業革命の田沼時代 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mazda
14
この本は内容が難しく、あまり頭に入ってきませんでした。しかし、田沼の業績は素晴らしいという最近の評価を確認したいので、他の本も読んでみたいと思います。2018/10/26
こずえ
1
田沼意次が実は有能な政治家だったというのをつぶさに説明していて推せる
もじゃ
1
一般的なものとは別の方向からスポットをあてていて面白い。「近世大名」としての田沼意次。分量以上の収穫はあったと思う。2014/04/03
おかポン
0
江戸時代の老中 田沼意次の話。一般的に賄賂政治家として悪名高い田沼意次だが、最近では幕政を重商主義政策に切り替えようとした開明的な宰相としての再評価を得ている。しかし、本書ではそのような新鋭な発想と同時に、儒教を重んじた日本人らしい気配りの人としての一面も読み取ることができる。2013/01/06
ほうじ茶
0
田沼意次の人間性がわかる資料を基に議論している本 個人的には経済政策で再評価を受けた人とは思えないほど旧来の感性も持っていたのだと驚いた 読み進めていくと運がなかったとはいえやはり田沼自身にも大名として欠陥があったのだと認識させられる 一方で切れ物だと言うことを裏付ける資料も豊富なので、田沼の清濁をかなり知れる書籍だと思う2020/02/24