内容説明
源氏の貴公子源頼朝。彼にとって、東国はそもそも“縁遠い地”でありました。しかし、内乱のなかで東国に生きることを決意し、鎌倉に拠点を定めます。そして東国武士たちを率いて鎌倉幕府を開き、「鎌倉殿」と呼ばれる地位を築き上げました。本書では、その具体的な様相を、頼朝の生涯を追いながら明らかにするとともに、それが東国や東国武士たちにもたらした影響についても考えます。
目次
二つの頼朝像
1 源氏の貴公子、東国へ(頼朝誕生の周辺;貴公子頼朝;伊豆配流;東国武士と源氏;京都と東国武士;東国をめざす都人)
2 鎌倉殿の登場(頼朝挙兵;房総半島での再起;富士川の合戦から佐竹攻めへ;御家人制の誕生;鎌倉の主)
3 源平合戦(朝廷との交渉;木曽義仲と頼朝;寿永二年十月宣旨;上総広常の死;平家滅亡)
4 東国の大将軍(御家人統制と義経;文治勅許と地頭制度;奥州合戦;上洛と征夷大将軍;頼朝と東国)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吃逆堂
1
リブレットなので、情報量こそ多くはないが、「東国を選んだ」という一貫した視点から描かれており、すっきりして読みやすい。同時に、十月宣旨や御家人制などの位置づけも示されていて、鎌倉幕府草創期の諸々をさらうのにもちょうどいい。2016/09/24
Dirty Boulevard
0
「東国と頼朝」という観点から、源頼朝の生涯を追っている。頼朝以前の東国の主従関係は従者の側に去留の自由が認められたゆるいものであったが、頼朝は「京下の輩」を排除もしくは傘下におくことにより、東国の国衙機構を直接掌握し、京の影響力を排除することにより、東国武士とそれまでより抑圧のある御家人制という新しい主従関係を結ぶことに成功した。2012/12/21
kito7792
0
歴史が面白い! 源頼朝の家系が複雑だけど少しわかったかな もっと学ばないといけない 2020/03/04
hr
0
平治の乱後の源頼朝が配流に落ち着いたのは、母方のコネクションが奏功したのではないかという部分は確かに、と思う。都育ちの頼朝は20年の東国暮らしの間に、朝廷と東国武士の歪な関係性を把握し、その歪さに権力基盤を作り上げる余地を見たのだな。この時代は、源平合戦の起伏の多さに目が行きがちだが、朝廷とは異なる異質な権力をクレバーに作り上げた頼朝も面白い。あと、粛清された御家人の多さに慄然とする。頼朝怖い。2018/06/17
カラス
0
伝記というよりも、「東国を選んだ貴公子」とでも言うべき本。テーマを一本に絞っているので読みやすく、良い本だと思う。内容は、鎌倉幕府誕生編とでも言うべきもので、頼朝が周到かつ慎重に、東国における支配権を確立し、京都を横目で睨みながら幕府を開いたのが良くわかる。義経との確執や平家との戦いなどの、読者がよく知っているであろう出来事は、あっさり触れるだけというのも好印象だった。詰め込みすぎずにコンパクトにまとめているところがよい。2018/02/17