内容説明
平泉の夢と北の歴史の可能性。平泉の文化と奥州藤原氏の歴史は、古代末期の日本社会がもっていた多様で豊かな可能性を示すものでした。平泉文化は、京都文化の単純な模倣でなく、日本国の枠を超えた「東アジアのグローバルスタンダード」というべき国際性を有していましたし、奥州藤原氏もまた、日本国から自立して北方世界を支配した、「北方王国」ともいえる権力でした。本書は、近年の研究で認識が一新した奥州藤原氏と平泉の世界を訪ねます。
目次
北方王国の夢
1 奥州藤原氏誕生―初代清衡(その1)(清衡の誕生と父母;「奥六郡の主」安倍氏と清原氏;北緯39度ラインと40度ライン ほか)
2 平泉開府と「奥羽仏教王国」構想―初代清衡(その2)(衣川から平泉へ;清衡時代の平泉館;中尊寺と仏教都市平泉 ほか)
3 天下三分―二代基衡・三代秀衡(「奥の御館」の乱と基衡時代の開幕;毛越寺建立と基衡の試練;陸奥守藤原基成と基衡 ほか)
流産した北方自立の道
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うしうし
2
県立図書館本を借り読み。先日読了した斉藤利男『平泉~北方王国の夢 (講談社選書メチエ)』との比較のため、10年以上前に執筆された『平泉(岩波新書)』を読もうと、検索をかけていたところ、2011年に刊行された本書を発見。内容は講談社選書のエッセンスとなっているもので、同選書は本書を基本に大幅に加筆・改訂されているものと思われる。装丁の関係から、本の重量が軽く、著者の主張もコンパクトにまとめられている。文字や図面に関しては、本書の方が見やすい箇所もあった。2015/04/04
かんたちばな
2
読む前は漠然と「鎌倉以前、平泉に栄えた三代の藤原氏」程度のイメージしかありませんでしたが、読了後そのイメージを更に深い、あるいは高いものにすることができたと思っています。清衡の確立期、基衡の隆盛期、秀衡の発展期とでも言いましょうか、三代それぞれの事業や苦労などが当時の事件や思想などと結び付いていくのを追うのは絵巻物を少しずつ紐解いていくような感覚にすら感じられました。とはいえ記述を見る限りではまだまだ未解明のこともあるので、機会があれば他の文献とも照らし合わせつ、いつか再読したい一冊でした。2013/07/20
hr
1
写真と地図が多くて、楽しく読了。冒頭の章で琉球王国と並べて論じているのが新鮮。藤原経清、昔から気になる。清衡と仏教とを繋げて一つの章にまでしてあるのにも納得。昔々の大河ドラマ「炎立つ」は、序盤見逃し続けたが、途中から復帰して面白く見た覚えがある。藤原経清と藤原泰衡を、渡辺謙が一人二役で演じていた。また見たくなってきた。2017/10/15
OTR
1
奥州藤原氏というと、藤原秀衡が義経絡みで有名だが、その他はあまりしられない。前九年の役と後三年の役で伸張した清原清衡が、衣川と平泉に建設を目指した奥羽仏教王国。それを支えたエゾや日本海、太平洋のネットワーク。そして、朝廷が不安定であるところに、奥州藤原氏という巨大政権が誕生、基衡、秀衡はそれを大きく拡充した。しかし、秀衡も「独立の維持」に腐心し、やがて鎌倉に権力が集まるにつれ、困難になる。泰衡も抵抗するが、最後は滅亡した。奥州藤原氏四代の栄華と衰退の物語。2014/09/15
とーさん
0
津波や世界遺産といった平泉が注目されていたので興味を持って読みました。 奥州という地にこういった歴史があることにびっくりします。 京の都とまた違う法華経の別世界が奥州の地で花開いていた事に驚嘆し、いつかは平泉に行かなくては、もっと東北の事も知りたいと興味を持った。2011/07/19