内容説明
万世一系の「十九世紀の陵墓体系」は、記紀批判のない文献考証と、現地で「口碑」や伝説を収集する「十九世紀の学知」によって決められた。大正期以降にあらわれ、敗戦から今日まで公認となる津田左右吉の古代史・神話研究、浜田耕作などの考古学といった「二十世紀の学知」と齟齬を生じるにもかかわらず、「十九世紀の陵墓体系」は「凍結」された。本書では、ひとり陵墓の問題のみならず、広く文化財をめぐる歴史認識としてとらえた。
目次
1 世界遺産と「19世紀の陵墓体系」(2008年神功皇后陵への立入り;世界遺産と陵墓 ほか)
2 陵墓がつくられる(近世の修陵;明治維新と陵墓 ほか)
3 陵墓と人びとの関わり(近世の神功皇后信仰;伝説と陵墓 ほか)
4 近代の学知と陵墓治定(西都原古墳の発掘;幻の『大阪府庁文書』 ほか)
21世紀の陵墓問題
著者等紹介
高木博志[タカギヒロシ]
1959年生まれ。立命館大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専攻、日本近代史。現在、京都大学人文科学研究所准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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坂津
1
幕末から明治初期にかけての陵墓の治定は、記紀を含めた史料批判の不徹底や、口伝や伝説の参照など、今日の観点からすると水準の低いものだった。その限界性を踏まえつつ、近世における人々と陵墓の関わりや、国家神道や聖蹟調査の興隆と文化財の関係性、今後の陵墓の在り方など、陵墓にまつわる諸問題を考える上で押さえておきたい事項を概説したリブレット。明治前期までは花見をする庶民にとっての憩いの場だった行燈山古墳が代表的な反例となるだろうが、荘厳な祭祀の場としての陵墓の在り方はあくまで歴史の一側面でしかないと分かる。2022/08/28
Aki
0
( ;´Д`)2016/01/05
hr
0
豊富な絵図に満足。国家神道との絡みも。2018/04/28
ごしょがたに
0
2010年初版。ヤフオクで購入。 御物は公開されてるのに、陵墓はまだまだ時間がかかりそう。近代の陵墓問題についてよくまとめられていました。2018/01/09