内容説明
正倉院に伝来した数多くの宝物と、それを生み出し、また保存してきた人びとの営み、そのあとに残された大量の文字による記録は、総体としてまさに奈良時代に始まる歴史そのものの生きた姿だ。著者が学んできた日本古代史という分野を、あらためて自身の立脚点と位置づけたうえで、「正倉院宝物の世界」の奥行きと広がりについて知ることの有用性を説く。
目次
正倉院宝物―奥行きと広がり
1 「もの」と技法の世界(概観のための視座;「もの」の集合―在庫品カタログ;出土品と伝世品;技法別の整理;「もの」と文字)
2 どんな役に立つのか(「文字の宝庫」としての正倉院;正倉院の文字資料;大宝律令と官僚制―官位令と職員令;国家祭祀と国家仏教の展開―神祇令・僧尼令 ほか)
著者等紹介
杉本一樹[スギモトカズキ]
1957年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退、博士(文学)。専攻、日本古代史。現在、宮内庁正倉院事務所長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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rbyawa
3
g134、前に友人と正倉院(東大寺)というのは要するに日本史上で初めての「夫のコレクションを持て余した妻の丸投げ寄進」ではないのかな、ということを話していたことがあるがさらにそこに、行政文書や職工などに関わる書付などがなぜか含まれているということを読んでさすがに苦笑、確かに貴重ではあるものの、なんでこんな場所で残るかは確かに謎だろうなぁww 別に正倉院はずっと封鎖していたわけではなく、管理や入れ替えされているとは聞いていたものの、それでも謎は謎だよなぁ、そもそものコレクションにそういうものがあったのかね?2016/12/30
そーすけ
2
264*日本史リブレットの一冊として正倉院宝物を解説しているので、「大宝律令と官僚制」など、文書に対する解説に重点がある。類書に掲載されていないような写真も載っているのだが、いかんせん全て白黒なのが残念。2021/10/16
ちはなゆ
1
正倉院宝物は、一部の見栄えのよい名品に力点がおかれがちだか、本書は奈良時代の基本法である律令と宝物を重ね合わせて解説をした内容となっている。文字史料により宝物の奥行きを具体的に示した、著者ならではの書籍。ただ、他の本でもそうであるが、正倉院宝物の全体像を捉えるのは難しく、正倉院展や関連書籍を併せ見ることで、内容もより深く理解できる。2018/05/20