内容説明
日本の近代は、その初めに「生き神」と「現人神」という二つの神観念を創出した。「生き神」は、幕末から明治にかけて登場してくる民衆宗教の民衆解放思想を支える根本原理となり、「現人神」は、近代天皇制国家のイデオロギー的な支柱である国家神道の事実上の絶対神として、国民の精神的自由を抑圧する源泉となった。両者の相克の歴史を、「人を神にまつる」という伝統的な思惟の様式につなげてみるとき、近代日本の精神史は、あらたな相貌をあらわし、あらたな課題を私たちに投げかけてくれるに違いない。
目次
生き神か現人神か
1 生き神教祖の誕生―民衆宗教の成立
2 現人神の浮上―国家神道の形成
3 教派神道への階梯―別派独立の意味
4 不服従の遺産
著者等紹介
小沢浩[コザワヒロシ]
1937年生まれ。東京教育大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専攻、近代日本民衆宗教史。現在、大東文化大学非常勤講師
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
∃.狂茶党
8
明治以降国家神道はいかにして形作られ、さまざまなものを飲み込んでいったか、民衆宗教はいかに巨大な力に覆われて変質していったかが綴られる。 ここにある国家神道の姿はこれが宗教とは別の運動であることを明らかにしている。 2004年に書かれた本書では、神社本庁の活動を悪あがきのように扱っているのだが、2022年、保守反動、宗教右翼勢力は改憲に向けて最後の一コマを埋めようとしている。 宗教は、教義に対する開かれた議論と学問に欠けている印象がある。 戦後、宗教は、戦争や国家に対しての知見をよく消化したであろうか。2022/05/30
hr
1
1944年に神祇院が出した「神社本義」に、「家族国家」という表現があることを本書で知り愕然とするなど。また、水戸学、本居宣長の古典研究、会沢正志斎の思想、平田篤胤の活動が、国家神道にどう影響をもたらしたかを考えねばと強く思う。国家神道と、天理教・金光教・大本教がどう対峙したかも興味深い。参考文献も丁寧に掲載されていて、今後の情報収集に役立ちそう。2017/07/06
つきもぐら
1
現代の宗教団体の成り立ちについて興味があったので購入。この本の良いところは薄さですね! 100ページ程度の文量でテンポよく記述されているので、無理なく読み通せます。800円もしません。良書です。筆者は一般人の信仰の立場から目を離しません。民間レベルの現場での信仰の在り方と、国家神道へ傾倒していく指導者レベルとの乖離を把握しながら読むことができます。第三章の「講」に関する推察は注目で、国家神道による弾圧がなく、教祖の熱ある教えが講を通じて現代にも生きながらえていたらどうなっているのか想像いたしました。2016/04/10
双海(ふたみ)
1
民間宗教に興味があった頃がなつかしい・・・。2013/07/30
こずえ
0
明治初期に国家神道ができて~ごちゃごちゃって高校日本史でよくわからなかったところを整理するのにはいいかも