内容説明
江戸幕府の崩壊はいつ頃から始まったのか。幕藩体制自体がはらむ矛盾、度重なる天変地異、激変する経済情勢、海を越えてやってきた脅威、力をつけた庶民。これらに対応して、幕藩体制を守るために行なわれた改革のうちの代表的なものが三大改革といわれる。しかし、三大改革という理解は正しいのだろうか。「内憂」と「外患」の視点から、三大改革を見なおすことによって、江戸幕府の崩れゆく様子を眺めてみたい。
目次
1 善政悪政交替史観と三大改革
2 享保の改革
3 寛政の改革
4 天保の改革
5 悪政の政治構造
著者等紹介
藤田覚[フジタサトル]
1946年生まれ。東北大学大学院博士課程修了。専攻、日本近世史。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授
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感想・レビュー
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だまし売りNo
15
江戸時代が進むと幕府も藩も運営が厳しくなった。武士の収入は年貢米が基本であるが、商品経済の進展により、支出が増える。このため、幕政改革でも藩政改革でも質素倹約が先ず掲げられることは当然である。この質素倹約を時代に逆行する消極的政策と低く評価する向きもある。しかし、質素倹約には身分や格式で贅沢をする既得権を否定する積極面があった。藩主自ら木綿の服を着るということに意味がある。現代に置き換えれば重役の社用車廃止など健全なコストカットに繋がる。2021/07/22
新田新一
11
享保、寛政、天保という江戸時代の改革について書いた本です。この3つの改革を通して見ることで、江戸幕府が徐々に衰退していったことをよく分かります。享保と寛政の改革はある程度成功して、幕府の権力基盤を強化し、財政を立て直すことに成功します。しかし、天保の改革の頃になると、異国の外圧が強くなり、財政の健全化も成功しません。学生の頃は歴史はただ暗記するだけの勉強でした。でも、このような本を読むと、歴史は経済や政治、外交などが複雑に絡み合って、じっくり向き合えば、様々なことを学べるものであることが分かります。2023/10/16
圓子
5
悪政があって対抗策としての善政が敷かれるという理解は勝者の理論みたいなもの。幕政の転換点はいつ・どこなのか。そもそも幕藩制・江戸幕府の政治機構上陥りやすい問題とは。公儀の意味とは。2021/03/29
sovereigncountr
2
江戸時代の三代改革を中心に据え、幕府の統治機構の本質に迫ろうとする野心的な概説書。2023/03/12
MUNEKAZ
2
ワンセットにされがちな享保、寛政、天保の改革だが、享保が幕藩体制の発展に伴う制度的な矛盾の解消にあったのに対し、後者2つは幕藩体制そのものの「危機」への対処にあり、立ち位置に違いがあるとする。とくに寛政と天保では打ちこわしや一揆、藩の独立性の増大といった内政面以外にも、度重なる異国船の侵入やアヘン戦争の衝撃など増大する外圧への対応があったというのは面白い。強引な引き締め策も幕府の「強さ」を示す必要があってのことであった。2017/08/08