内容説明
中世は、疫病や飢饉、戦乱があいついだ時代だったが、中世人は神仏に祈りをこめつつ、力を蓄え、力を結集して、列島の各地に地域社会を形成してきた。また中世は意外なほどに国際化された社会でもあった。本書では、このような中世という時代を、足元の道にはじまって、政治権力や信仰、民衆世界、地域の社会文化などから探り、現代社会を考える手掛りを求めてみた。
目次
1 足元から中世を探る
2 政治権力を考える
3 信仰の世界からみえるもの
4 民衆の世界からみえるもの
5 列島の地域社会から
6 歴史のサイクルをとおして
著者等紹介
五味文彦[ゴミフミヒコ]
1946年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科。専攻、日本中世史。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
組織液
17
一般的にはなんとなく遅れていたと考えられている中世の世の中を、現代の視点にそって簡単に述べられているリブレットです。軽い内容でしたが、中には院政が分権化の深まりに対応するものであった、毛越寺という命名は下野、上野と北陸道を奥州藤原氏が支配する構想からきているのかもしれない、アイヌの人と和人がまじって埋葬されていた、など中々突っ込んだものもあって想像以上に引き込まれました。2021/02/24
白義
6
当時の景観や人々が目の前に蘇ってくるかのような味わい深い本。中世と現代というより、現代から見た中世史入門、随想集といった感じかもしれない。生の過酷さや死の気配と裏腹の、開放的ですらある空気が読み心地がいい。富の蓄積が長期間の戦を生んだなど部分的な指摘も面白い。海や山岳の世界観を味わせてくれる文章はやっぱりいいね。日本中世史には明るくないので本書のような良書を手引きにこれからも学んでいきたいところ2012/08/02
カラス
1
P102「本書は中世社会について日ごろから考えたり、書いたりしたことを現代の視点からまとめたもの」とあるように、日本中世について徒然なるままに語った歴史エッセイ。歴史家の割に記述がうまく、読んでいてぐいぐい引き込まれ、いつの間にか読了。日本中世はこうだ!、みたいな感じの明確なビジョンがあるわけではなく、日本中世の風景を切り取って読者に提示するというイメージ。この本は、いわば読者に対して見通しの良いパノラマを提供しているわけであり、著者に手を引かれるまま景色を眺めるような気持ちで読むと良いと思う。2020/08/17
rbyawa
0
f224、正直なところ鎌倉新仏教へと至る流れを知っていればそれ以前の顕密主義や神祇信仰(権力と寺社とのつながり)からの展開は面白いし、貨幣の存在そのものがこの当時の日本になく、中世の頃に宋銭の流入によって復活した、という話も非常に興味深く読めたもののこの本だけを読んでいて果たしてそれぞれの事態をつなげて読めたのかなぁ、というのは疑問w 現代というよりシステム面から語る中世という視点で読み、背景となる歴史事象や人物への興味を持ってから読むべき本かなぁ、そういう意味ではすごく面白かったんですけどね、地味かも。2015/10/24
瀬戸晴海
0
創作資料として。2013/12/09