内容説明
いつの時代にもあることだが、中世にも巨額の借金をかかえていた人びとがいた。だが、巨額の借金をかかえながらも、彼らは案外したたかに生きていた。自己破産のような法的逃げ道がなかった当時、なぜそれが可能だったのか。本書は中世の金融システムを解き明かしながら、そのなぞに迫ろうという試みである。
目次
したたかな債務者たち
1 「尾張房料足の事」
2 松梅院禅能の破産
3 有徳人たちの末路
4 金融ネットワーク
5 破産管財の仕組み
6 経営再建は成功したか
著者等紹介
桜井英治[サクライエイジ]
1961年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。専攻、日本中世史。北海道大学大学院文学研究科助教授
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感想・レビュー
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林田力
40
足利義持も父親の義満と同じく北野天満宮を強烈に信仰した。義満に反発し、義満の逆の政策を採ることが多かったが、北野天満宮信仰は一致していた。 2023/11/12
楽
15
転々流通する借用証書は現代の手形にも似る。さて、仮に60石の収穫がある土地を担保に7割の42石に相当する金銭を借り、月利8%(年利ではなく、かつ単利)とすると金利は年約40石(相当の金銭)となる。2年で120石の収穫があれば、貸し手は元本と2年分の金利を確保できる。いわゆる「利子一倍法」の原則からするとこれ以上は取り過ぎだから、徳政令で土地を返せと言われても貸し手に損失はない(1年で返すにしても元本割れはしない)。このあたりが徳政令の貸し手側からの見方と思うのだがどうだろうか。早島大祐『徳政令』に進む。2019/02/03
組織液
14
これは面白いリブレットでした。「両者の応酬をみて、これが本当に中世の裁判かと目を疑った読者もおられるだろう。」いやほんと… ネットミームじゃよく蛮族扱いされる中世人ですが、非常に高度な金融システムで中世社会は成り立ってたんだなぁと。現代の金融や経営についてもっと詳しければ尚更面白く読めたんでしょうね。そっちも勉強してみようかな…2022/06/26
MUNEKAZ
10
足利義教期の裁判記録をもとに、中世の金融システムを紹介した一冊。扱われているのは都の上層階級に限るのだが、それでも現代に通ずる金融業や破産のシステムが、室町の世で行われているのはなかなか面白いし、そうした現代的な部分と大寺社の神意に基づく強訴が、矛盾することなく存在するのが、中世の魅力だということも再確認できた。さらに言うなら本書では扱われていないが、実際はこれに『徳政』というすべてをひっくり返す要素が絡んでくるわけで、室町社会は泥沼である。2017/10/01
keint
7
中世の金融における法や習慣を実際の裁判の例から考察している。 債務者が返済不能になった場合は、債権者が債務者がもっている土地の年貢を抑えていたり、室町幕府自体の財政が土倉に依存したものであるというのは参考になった。2019/09/06