内容説明
教科書には必ず取りあげられる「武士と荘園支配」。古くからのテーマであっても、つねに新しく魅力的な課題である。フレッシュで躍動的な武士像をお見せするために、本書ではいくつかの切り口―山野河海・流通・差別と用意した。武力を背景に、所領である現地・荘園を、武士はいかに支配したのか。あらゆる利権を貪欲にあさりつづける武装した総合商社、そんな風に中世武士団を考え直してみた。
目次
1 山野河海―武具・兵士・分業(狩倉と皮革製品・武具;人吉荘狩倉と染革;皮染給と弓の課役;弓作と弦売;鹿狩り・鷹狩りの禁制;鷹栖・狩人・牧;桧楚(比曽)
紺灰
簗)
2 流通体系の把握(市場在家;市日の騒擾;地頭の市場支配;津・倉敷・海上番役;九州随一の水軍・山鹿秀遠とその末裔)
3 武士と河原の者(犬追物と河原の者;祭祀の場と「坂の者」「河原の者」―興行支配)
4 佃と出挙(佃・正作の利点;佃・正作と井料・仏神田の併置)
著者等紹介
服部英雄[ハットリヒデオ]
1949年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。専攻、日本中世史。現在、九州大学大学院比較社会文化研究院教授
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感想・レビュー
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翠埜もぐら
10
書名にもかかわらず、荘園内の流通や市、被差別民と武士のかかわりあいなどに話が終始し、領主や武士の関係、荘園における武士の立ち位置などがあまりはっきりしませんでした。武士は殺生を生業とし武力を芸とするどちらかと言うと賤視されていた集団だったわけですが、支配者層に食い込み成り代わっていく手段であった荘園の管理や経営について知りたかったです。考えていたのと中身が全く違いました。2021/06/14
MrO
3
武士のイメージを刷新する内容ではある。武士というと、ふつうの日本人は、江戸時代か、源平の争乱を思い浮かべるのだろうと思うが、内実は、農業経営者であり、流通業者であり、暴力団でありと、いわばバックをかかえた総合商社みたいなもんだった。生活していくんだから、言われてみれば、そりゃそうか。2022/03/19
剛田剛
2
「武士」という集団を理解するには、彼らが「武力を振るう技能」を持つ専門家集団であったことをまず出発点に置かねばならない。そこから騎射という特殊技能の訓練方法、武具とその材料である皮革の調達ルート、それらを支える経済力、といった要素を繋ぎ合わせていったその先に「武士」の実像がぼんやり浮かんでくる。2020/10/01
rbyawa
1
f238、大雑把にかつて武士はあくまで卑賤の存在であって、そこから地位の向上を図り、最終的に武家政権まで樹立することになったのだ、という観点で語られている本で、そういう意味では面白くはあったのですが。そもそも武士の登場する中世の初期にそんなに明確な階級意識がなかったと語られていることもあるので(中世末くらいまでに確立されたはず)、そういう意味だとちょっと評価しにくくはあるかなぁ。日本史リブレットにも庶民から見た中世の本も結構数があるしね、武士が地方拠点から中央へと進出していく過程として見るのが妥当かしら。2015/11/22
在日宇宙人
0
もうちょっと、地頭のやってきたことが書かれていると思ったが、武士とその周辺の習俗がメインでした。2016/05/11