内容説明
受領―その名前からして物欲の権化のようなイメージを持たれがちな平安時代の国司たち。たしかに受領には貪欲な徴税吏という側面もあり、彼らを「腐敗官僚」の歴史の一コマとして描くことも可能です。しかし一方で、彼らは十・十一世紀の政治・経済・社会、さらには文化や対外関係を理解するために、欠くことのできない存在でもあります。それは、当時受領が都と地方とを結ぶ、もっとも太いパイプの一つだったからにほかなりません。受領の往来は、人びとに何をもたらしたのか、このような視点から、受領の姿をもう一度見直します。
目次
「受領ハ倒ルル所ニ土ヲツカメ」
1 国司から受領へ
2 受領の任国支配
3 摂関政治と受領
4 受領群像
5 受領と交通
著者等紹介
佐々木恵介[ササキケイスケ]
1956年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。専攻、日本古代史。現在、聖心女子大学文学部教授
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感想・レビュー
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Hiroshi
3
受領は「受領は倒るる所に土を掴め」と言われるほど強欲だと言う。菅原道真・紀貫之・大江匡衡も受領を経験した。その受領をみていく本。◆大宝律令では、国司は守・介・掾・目の四等官から成った。そして赴任した国で進んだ技術や知識を用いて人民の生活の向上・安定を図り、郡司を使って国を支配し、租庸調を徴税した。だが、8世紀になると墾田永年私財法により墾田開発が進行し、郡司とは別に富豪の輩も現れた。郡司による地方の伝統的支配が崩れ、そのため郡司の任用方法が譜第主義から実力主義に変わった。課税対象が人から土地に転換もした。2020/03/07
こずえ
2
地方と都の情報の伝達、地方での文化の伝播など参考になることが多い。高校日本史では都中心で記述されているため、大学で歴史を勉強しようという人には新しい観点をもてるのでおすすめ
空木モズ
0
平安時代の地方のことが知りたくて読んだ。墾田永年私財法が後の世を指差しながら笑っているのが見える気がする…。この中で私が一番興味を持ったのは、弁済使が都近くの納所で行っていた交易活動だった。国風文化とは何かがこれから変わっていくと思うと楽しみ。2016/04/07
星規夫
0
小冊子戦術第十二弾。ろくに日本史を勉強していなかったせいか、どうも頭にぴんとこない。高校の教科書を読みなおそそかしら。2012/08/03
sfこと古谷俊一
0
弓箭算筆に優れた郎党の理想像は、武士が初期から文武両道が理想だった事を示してるのかな。教科書とか歴史の本を含めてさらっとながされている受領だけど、いろいろと残る文献で研究がされているんですな。2009/05/18