内容説明
石原吉郎を深く読むために。極寒の地シベリアに八年にわたって抑留され、苛酷な労働と非人間的な強制収容所生活で人間のぎりぎりの本質と死を見とどけた伝説の詩人をめぐって、『季刊 未来』で好評を博した連載に参考文献と詳細な年譜を追加して一冊にまとめた力作評伝。生前の詩人の謦咳にじかに接した著者が哀惜を込めて書き上げた詩的乾坤!
目次
処女作まで
戦後の意味
暗い傾斜
単独者の祈り
哈爾浜特務機関
シベリアへ
強制と共生
望郷
沈黙と失語
沈黙と失語(続)
恢復期
帰還
ロシナンテ
クラリモンド
俳人青磁
晩年
著者等紹介
郷原宏[ゴウハラヒロシ]
詩人・文芸評論家。1942年、島根県出雲市生まれ。早稲田大学政治経済学部新聞学科卒。元読売新聞記者。詩誌『長帽子』同人。74年、詩集『カナンまで』でH氏賞受賞。83年、評論『詩人の妻―高村智恵子ノート』でサントリー学芸賞受賞。2006年『松本清張事典決定版』で日本推理作家協会賞(評論部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たま
22
松家仁之さんの『泡』の参考文献に(登場人物の経歴の参考にされたのだと思うが)石原吉郎関連の本が挙げられていた。現代詩を読んでいた頃、石原吉郎の詩も愛読していたけれど、シベリア抑留経験の詳細は知らなかったし、そもそも抑留そのものが戦後長い間触れるのが難しい話題だった。 そんなわけで図書館で見つけたこの本(2019年出版)を読んでみた。緻密かつ明晰に石原の経歴と詩作品を紹介している。石原の生きた時間と空間を知った上でその詩を読むと、俗に言う「言語を絶する」経験から紡がれた言葉に読み手は言葉を失う。 2021/08/24
かふ
15
石原吉郎のノート(日記)だと思ったら石原吉郎についてのノートだった。そこから浮かび上がる石原吉郎は、詩や日記だけを読んだだけではわからなことなど丁寧に調査している。その背景にあるのは石原吉郎のシベリア体験だった。ほとんど彼の詩を理解するのは、スターリン時代のシベリア収容所について理解する必要があるようだ。 大滝詠一の「さらばシベリア鉄道」のイメージが石原吉郎に書き換えられた!2022/08/28
とりもり
1
事実関係は当然ながら以前に読んだ「シベリア抑留とは何だったのか」とほぼ一緒。それを踏まえた上で石原の代表的な詩を読むのもほぼ一緒。違いはやはり著者自身が詩人なので、その作品に対する解説(誰の影響を受けているのかとか、その出来栄えとか)がやや詳しいことくらい。内容的には読まなくても問題なかったが、改めて石原の詩のリズム感の良さが印象に残った。単なるシベリア詩人というだけではない彼の詩の良さを実感できたのは良かったかも。★★★☆☆2021/01/19