出版社内容情報
民衆運動、イスラーム、石油、紛争、ジェンダー、アメリカ…流動化する各国情勢と地域秩序を多角的に分析。中東地域は変容した。湾岸戦争とイラク戦争、中東和平の進展と膠着、「アラブの春」と「イスラム国」の発生、アラビア半島諸国の勃興……20世紀末から現在に至る動きは、中東地域・アラブ諸国内部の対立やパワーシフトを白日の下に晒し、ここに新たな地域秩序が生まれつつあることを示した。こうした流れを踏まえつつ、本書は中東各国の「今」を見つめながら、新たな中東を多角的に読み解いてゆく。
はしがき
序 章 中東とグローバル・サウス(松尾昌樹)
第?部 中東世界の変容
第1章 冷戦後の国際政治と中東地域の構造変容??米国の対中東政策を中心に(溝渕正季)
1 冷戦後世界における米国単極構造と中東
2 「パックス・アメリカーナ」の成立――クリントン政権期とそれ以前、1989~2001年
3 「帝国」の野心と挫折――ブッシュ政権期、2001~09年
4 撤退する米国――オバマ政権期、2009年~
第2章 イスラーム主義運動の歴史的展開――中東地域研究における意義を再考する(末近浩太)
1 やせ細るイスラーム主義運動研究
2 イスラーム主義とは何か
3 過激派はなぜ生まれたのか
4 岐路に立つイスラーム主義運動
5 新時代のイスラーム主義運動と中東地域研究
第3章 グローバル化する中東と石油――レンティア国家再考(松尾昌樹)
1 レントと権威主義
2 「石油の呪い」と「レンティア国家仮説」
3 レンティア国家仮説と中東地域研究
4 レンティア国家研究のフロンティア――レント配分政策の変化を追う
コラム1 中東で導入が進む再生可能エネルギー(堀拔功二)
第4章 エジプトの「革命」――民衆は時代の転換に何を望んだか(岩崎えり奈)
1 1月25日革命から5年経つエジプト
2 人々は何に義憤を感じたのか
3 意識調査という手法
4 革命前後で人々の意識は変化したのか
5 革命を境に人々の意識は変化したのか
コラム2 中東と「南」という問題系(井堂有子)
第5章 アラブの春とチュニジアの国家=社会関係――歴史的視点から(渡邊祥子)
1 アラブの春はなぜ起こったか――格差とクローニー・キャピタリズム
2 チュニジアの国家形成とパトロン=クライアント関係
3 国家の安定とパトロン=クライアント関係の変容
4 「南」から始まった革命
第6章 「パレスチナ問題」をめぐる語りの変容(金城美幸)
1 パレスチナ問題の起源と帝国主義・植民地主義
2 「パレスチナの大義」の語り
3 帝国主義と民族対立の創出
4 中東「諸国体制」からオスロ和平プロセスへ
第7章 中東地域の女性と難民??紛争による周縁化の現実(円城由美子)
1 中東の政治変動と難民の発生
2 脆弱な難民女性
3 シリア難民の大規模流入による労働市場への影響
4 社会進出と伝統の狭間で??イラクの人身取引
5 中東の「女性」の「難民」が内包している複雑さと普遍
コラム3 アラブにおけるジェンダーと教育(平井文子)
第?部 中東諸国の課題
第8章 トルコ――新自由主義・親イスラーム政党・秩序安定化外交(今井宏平)
1 第3共和制下のトルコ
2 トルコにおける新自由主義の受容
3 公正発展党の台頭
4 トルコの「西洋化」と「中東化」
5 「グローバル・サウス」とトルコの関係
コラム4 アタテュルクの「子孫」たち(岩坂将充)
第9章 アラビア半島諸国――中東地域秩序における台頭(村上拓哉)
1 台頭するアラビア半島諸国
2 君主制国家群としてのアラビア半島諸国
3 GCC――アラビア半島諸国間の王政護持同盟
4 安全保障政策の軍事化と欧米諸国との連携
5 中東地域秩序におけるアラビア半島諸国の役割の展望
コラム5 湾岸アラブ諸国の移民労働者(細田尚美)
第10章 イラン――イスラーム統治体制の現状(坂梨 祥)
1 イスラーム共和国体制とは
2 外交政策
3 イスラーム統治体制の現状
4 イランの覇権とシーア派脅威論
第11章 イラク――統治体制をめぐる迷路(吉岡明子)
1 イラクの成り立ち
2 イラク戦争後の政治プロセスと分極化
3 収まらない混乱
第12章 パレスチナ問題――イスラエルの国家安全保障と和平交渉(江崎智絵)
1 パレスチナ問題をめぐる紛争の構造とその変化
2 2つの平和条約とパレスチナ問題
3 パレスチナ問題の包括的解決の試み
第13章 ヨルダン――紛争との共生(吉川卓郎)
1 混沌の海を泳ぐ
2 承認をめぐる議論
3 「アラブの春」と民主化
4 経済自由化とヨルダン社会
第14章 グローバル化時代の中東研究――板垣雄三氏の問題提起をめぐって(岡野内 正)
1 学問研究のタコツボ化
2 板垣雄三氏の問題提起
3 板垣氏の問題提起への疑問
4 タコツボを超える対話のため修正命題
関係年表/人名索引/事項索引
松尾 昌樹[マツオ マサキ]
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岡野内 正[オカノウチ タダシ]
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吉川 卓郎[キッカワ タクロウ]
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内容説明
中東地域は変容した。湾岸戦争とイラク戦争、中東和平の進展と膠着、「アラブの春」と「イスラム国」の発生、アラビア半島諸国の勃興―20世紀末から現在に至る動きは、中東地域・アラブ諸国内部の対立やパワーシフトを白日の下に晒し、ここに新たな地域秩序が生まれつつあることを示した。こうした流れを踏まえつつ、本書は中東各国の「今」を見つめながら、新たな中東を多角的に読み解いてゆく。
目次
中東とグローバル・サウス
第1部 中東世界の変容(冷戦後の国際政治と中東地域の構造変容―米国の対中東政策を中心に;イスラーム主義運動の歴史的展開―中東地域研究における意義を再考する;グローバル化する中東と石油―レンティア国家再考;エジプトの「革命」―民衆は時代の転換に何を望んだか;アラブの春とチュニジアの国家=社会関係―歴史的視点から;「パレスチナ問題」をめぐる語りの変容;中東地域の女性と難民―紛争による周縁化の現実)
第2部 中東諸国の課題(トルコ―新自由主義・親イスラーム政党・秩序安定化外交;アラビア半島諸国―中東地域秩序における台頭;イラン―イスラーム統治体制の現状;イラク―統治体制をめぐる迷路;パレスチナ問題―イスラエルの国家安全保障と和平交渉;ヨルダン―紛争との共生;グローバル化時代の中東研究―板垣雄三氏の問題提起をめぐって)
著者等紹介
松尾昌樹[マツオマサキ]
1971年生まれ。1995年立教大学文学部卒業。2004年東北大学大学院国際文化研究科博士後期課程修了、博士(国際文化)。現在、宇都宮大学国際学部准教授
岡野内正[オカノウチタダシ]
1958年生まれ。1981年大阪外国語大学アラビア語科卒業、1986年同志社大学大学院経済学研究科博士後期課程退学、経済学修士。現在、法政大学社会学部教授
吉川卓郎[キッカワタクロウ]
1974年生まれ。2004年立命館大学大学院国際関係研究科単位取得退学、国際関係学博士。現在、立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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