内容説明
「親がみるべき」などの社会規範に縛られて、「自立は無理」と本人も家族も思い込まされてきた知的障害者とその親たち。本書では、本人と家族が互いに「主体的に生きる自立した大人」と認めあえる社会の実現に向けた方途を考えていく。主観的にしか捉えられない「自立」や「成長」といった変化を論じる(考察する)一つの方法として、今まで主に心理・保育分野で使われてきた手法である、エピソード記述を福祉の研究に援用した意欲作。
目次
第1章 日本と諸外国における障害者の家族依存の実態
第2章 「親元からの自立」ができない状況へのアプローチ
第3章 知的障害者の親による運動における親の認識変容
第4章 親元からの自立に関するインタビュー調査と質的データ分析
第5章 エピソード記述による考察
終章 知的障害者の「親元からの自立」に向けて
補章 知的障害のある人の青年期における親子関係の変容についての一考察
著者等紹介
森口弘美[モリグチヒロミ]
1971年生まれ。1994年京都大学文学部史学科卒業。1994~1999年社会福祉法人わたぼうしの会勤務。1999年~2012年財団法人たんぽぽの家勤務(非常勤)。2002年同志社大学大学院文学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了。2012年同志社大学大学院文学研究科社会福祉学専攻博士後期課程修了。現在、同志社大学社会学部社会福祉学科助教。博士(社会福祉学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いとう
1
知的障害の『自立』ではなく『親元からの自立』としている。 健康マイノリティの発見(著:標美奈子)と同様、ケアをする者に依存する社会構造を指摘しているが、保護者側の要因も丁寧に指摘している。 Q:発達障害に関して、支援者である病院や学校の要因はないか?ASDのマイノリティ化2021/06/22
YASU
1
障害者自立支援法(総合支援法)によって「自立」支援が大切になったこんにち,知的障害者に限っては自立支援がなかなか進まない.その大きな要因として親元からの自立が困難という事情がある.ケアを親に押し付ける社会のあり方を見直し,どうすれば自立可能かを探った学術書である.2020/07/31
mogihideyuki
1
知的障害者の自立は"周囲の人が本人にどのように関わり、それに対して本人がどのように応じ振る舞うかの相互作用によってもたらされる関係性の変化として理解することもできる"と著者は言う。"「一人の友人」や「一人の住民」として、また「学生に学びをもたらす存在」として遇されることになり、それに応じた振る舞いが本人から引き出されることにつながる"。伝統共同体では、通過儀礼を終えると扱われ方が一気に変わる。大人と同じ仕事を教え込まれ、相応の振る舞いを求められる。人の自立や成熟を考えるうえで重要なポイントだと思う。2018/04/03