出版社内容情報
生まれも境遇も違う両巨人の思想・理論の比較から現代に生きる考え方を読み取り、新しい経済学実現への道を探る
内容説明
現代の世界経済は先の見えない混迷の時代を迎えている。今こそ蓋然性論や不確実性論に先駆的な業績をあげた二人の巨人を再検討する必要がある。ケインズの思想と対比することにより、難解で知られるナイトの思想への理解を助ける。本書は、「銀の匙」対「木の匙」、生まれも境遇も違う両巨人の思想・理論の比較から現代に生きる考え方を読み取り、新しい経済学実現への道を探るものである。
目次
第1章 「想定外」を想定する―ケインズ対フランク・ナイト
第2章 蓋然性論と不確実性論―奇跡の一九二一年
第3章 ナイトのトリアーデ―リスク・不確実性・利潤
第4章 時代の子ケインズと新しいヴィジョン―ナイトへの接近と離反
第5章 ケインズの新理論―『一般理論』の衝撃
第6章 市場均衡の美学とナイトの異論―競争の論理と倫理
第7章 ベルヌーイからケインズ=ナイトまで―原発のリスク経済分析
第8章 同時代人たちを超えて―不確実性の時代を生きる
著者等紹介
酒井泰弘[サカイヤスヒロ]
1940年大阪府生まれ。1963年神戸大学経済学部卒業。1972年ロチェスター大学Ph.D.。現在、筑波大学名誉教授、滋賀大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
105
かなりな力作だという気がします。ちょっと私には程度が少し高すぎる感じでした。この著者の本は、リスクに関するものは読んだことがあるのですが。ただ、フランク・ナイトについてはかなり昔の学生時代から興味を持っていて、「リスク・不確実性・利潤」の原書は外書講読という授業でちょっとかじったことがあったのですが。第8章の「同時代人たちを超えて」は近江商人とアニマル・スピリッツなどについて書かれていて若干エッセイ的な感じがあったので楽しめました。じっくり読み直さねばならない感じです。2015/12/23
Francis
9
ケインズ対フランク・ナイトと言うタイトルの割にはケインズに対する評が多い印象でナイトについてはあまり良くわからないのが正直な感想。とは言えどもケインズが「蓋然性」「不確実性」「リスク」を重視した経済学者であることはよく伝わってくる。ナイトについてあまり語っていない印象なのはナイトはあまり日本では知られていないから、なのだろうか。2019/12/26
さきん
5
現代の世界経済は先の見えない混迷の時代を迎えている。今こそ蓋然性論や不確実性論に先駆的な業績をあげた二人の巨人を再検討する必要がある。ケインズの思想と対比することにより、難解で知られるナイトの思想への理解を助ける。本書では、「銀の匙」対「木の匙」、生まれも境遇も違う両巨人の思想・理論の比較から現代に生きる考え方を読み取り、新しい経済学実現への道を探るものである。不確実性とリスクは、量れるか否かで大きな違いがあり、経済学はこの不確実性に目を向けていく必要があるようだ。2016/01/05
nizimeta
3
著者の回想やただの印象を語ったような記述が多く、タイトルになっているナイトとケインズについての比較研究に関する記述はあまり多くない。またケインズの蓋然性論(確率論)を重要視する割には記述が少なく、後のラムジーの批判やケインズ本人も誤りを認めているといった話も出てこない(これらについては伊藤『人間的な合理性の哲学』に記述がある)。ナイトについては多少は解説が出てくるが、ケインズの確率論の解説や問題点が知りたければ伊藤前掲書を読んだほうがまだよいのでは、という印象を受けた2018/03/24
毒モナカジャンボ
0
大量の自分語りが挿入され主題を追うのが割と大変だが、計算可能なリスクと計算不可能な不確実性は経済にどのような影響を与えると考えるべきか、という軸で二人の思想を整理している。『蓋然性論(確率論)』は翻訳あるけど、『リスク・不確実性・利潤』は出る気配がない。タレブのブラックスワンはかなりフランクナイトから借用したのでは?と思わなくはない(そうだったとしても言わないだろう、タレブは経済学を殴ることにご執心なので)。古典派経済学を古典力学、ケインズを統計力学に喩えるのはなるほどと思う。山本七平の亡霊は嗤う。2020/01/15