内容説明
近年ニート、フリーターに象徴される若者労働に関する類書は多いが、社会学や心理学に論点をずらすものが多い。本書は、ニート、フリーター、正社員を相互に無関係ではない地続きの存在として、若者労働をとりまく厳しい状況(=労働問題)に注視し、どの雇用形態でも働く若者が労働条件を改善できるような発言の仕組みを獲得すること、すなわち経営者や労働組合が何を変えうるか、既存の労使関係の再構築を提言する。労働問題屈指の論客が、漂流する現代若者労働を多面的に考察し提言する「気づきへの促し」の書。
目次
序章 若者の労働をめぐって
1章 若者労働の状況と背景
2章 状況のもたらす社会的影響
3章 若者労働 状況変革へのチャレンジ
4章 教室と職場
補章 フリーター漂流
終章 いま若者たちにとって仕事とはなにか
著者等紹介
熊沢誠[クマザワマコト]
1938年三重県に生まれる。1961年京都大学経済学部卒業。1969年京都大学経済学博士。甲南大学経済学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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白義
9
労働問題の第一人者が、今まで手掛けなかった若者の労働問題を概観、提言した良書。安心と信頼の熊沢クオリティで、ミクロとマクロ、両方にふれてあるのが○。フリーターたちの真面目さの裏にある諦念、それを与えることになる彼ら以上に酷使される現場の正社員から教育現場と企業のミスマッチまで、まさに今の労働市場のリアルが的確に整理されている。文章は穏やかだが読む人間が読めばこれほど身に迫る本もないだろう。長時間の仕事を安い金で使い続けても、キレることもなくやりがいまで搾取される人間の姿は、穏健な分かえって暗い2012/09/10
カモメ
4
熊沢誠の「職場への定着」を理想とする考えに納得できかねていましたが、わたしが「職場を自分たちで変えていく」という発想がいかに乏しいか気付かされました。若者論・教育論に迫る3章、4章が好きです。やりたいことを仕事にできるのは稀なことであること、社会に出会うことを避けていて自分探しはできない、好きなことを仕事にできるのは滅多にないから余暇を楽しむすべを身につける、といった考え方はとてもリアリティがあり納得できました。2017/06/25
すのう@中四国読メの会コミュ参加中
4
大学で学ぶ意味を見いだせない人が多数存在すると、実感している。進学しなければ、より一層悪い職場で働くことになるからと、消極的理由で通っている。今この勉強をしたとしても、将来は何の役にも立たないだろう、けれど就活では言わなければならないし。それよりも、学費を払うためにアルバイトを入れなきゃ…といった具合だ。将来いい職場なんてないと分かっている。けれど、ブラック企業でもいいから雇ってほしい。そうすれば、やりがいが見つかるかもしれない、頑張れるかもしれない。そんな労働者をハンズとして使い捨てる社会って…2014/01/10
Humbaba
3
生きていくためにはお金が必要である。そして、お金を得るためには働くことが求められる。自然なことではあるが、その環境が期待外れのものである場合なかなか働こうという意志は持てない。特に禁煙になって労働環境は悪化してきている。一方で収集できる情報の量は増えているため、自分たちが恵まれていないということは理解できる。知識が多いのはよいことではあるが、それによって知らなければ我慢できたことを知ってしまうこともある。2024/01/28
北田覚
0
多様な視点から労働に関して考えさせられる良書。2012/08/10