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理想の教室
『こころ』大人になれなかった先生

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  • サイズ B6判/ページ数 155p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784622083061
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C1398

内容説明

大人になることは、かつては親を超えることでした。ところが、その機会を奪われたのが、ほかならぬ「先生」です。そこに不幸の始まりがありました。「先生」が果たせなかった“父親殺し”の問題を、詳細に追究します。さらに、「先生」「K」「私」をめぐって幾重にも仕掛けられた驚くべき謎を読み解きます。最高の漱石入門。

目次

第1回 なぜ見られることが怖いのか(長すぎた遺書;眼差しへのこだわり;眼差しが怖い ほか)
第2回 いま青年はどこにいるのか(語る人間の物語;冒頭と末尾の矛盾;隠された感情 ほか)
第3回 静は何を知っていたのか(「先生」と呼ぶ理由;エリートのための純粋培養システム;高等教育の中の出会い ほか)

著者等紹介

石原千秋[イシハラチアキ]
1955年生まれ。早稲田大学教授。専門は日本近代文学。文学テクストを現代思想の枠組みを使って分析、時代状況ともリンクさせた斬新な読みを展開する。また、「国語」教育について入試国語の読解を通した問題提起を積極的に行っている
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ばりぼー

33
著者の石原さんは、「文学研究者は小説のテストパイロットのようなもので、小説の可能性を限界まで引き出すのが仕事の一つ」とおっしゃっていますが、「こころ」をこんな解釈で読んでしまうなんて、凄すぎます。書籍の帯(この画像には写ってなくて残念)にある「驚くべき謎が解かれる!前代未聞の漱石入門」という惹句に嘘はありません。「こころ」はミステリーではないし、ネタバレを心配することもないのですが、「真相」については触れないでおきます。↓他の方のレビューにはもろに出てますので、興味のある方は下を読まない方が無難です。2013/09/06

べる

23
『こころ』の読解が深まる学び多き本。眼差しに過度に敏感な日本文化が視線恐怖症を生んだ。両親から人生の指針を受け取れずに内側の自分が不安定な先生は、他人の視線で自分がモノ化するように感じていた。人の言語動作と心は一致しているべきという先生の倫理では複数の自分を持てずに耐え難いこと。大人になる儀式の「親殺し」をKを相手に行おうとして、勝てる恋のゲームに誘い込んだ。物語を語る青年は先生の禁止を破って大人になることによって静と対峙し、現在は子どもがいる様子。大人になれなかった先生によって読者は青年と大人になれる。2023/08/14

やっさん

21
漱石研究者による、一般向け解説書。高校生の頃に読んだ際は先生の裏切り→Kの自殺と捉えていたけど、今回読んで原因はそればかりではないと漠然と思っていたが精度の高い読み取りが面白く、興味深かった。青年と静が結婚した説もあるんですね~。小説の「ほころび」を堪能するとは、なんと豊かな読書であろうか(著者の場合は研究だが)。現代ならSNS等で粗探し・指摘で欠陥作品扱いだろうなぁ。2021/12/25

あなた

14
先生の外面/内面のアイデンティティのありようから(石原は『明暗』でも同じトーンの論を展開する)、先生による「K殺し」という動機まで導いていく。「立派な」先生が「下劣な」先生になり、テクストは反転する。Kは嫉妬のために死んだのではなく、先生が振り向いてくれず「さびしく」て死んだ。そしてそのさびしさを演出したのが先生。嫉妬というのは、伝えても伝わら/えられない言語的交通事故のありようなのだ。しかも、その「ありよう」が疎外された嫉妬深い私という第三項をバネにしてさらに対象の二人の結びつきを強める。(続2009/08/25

10
大人になることは、かつて親を越えることでした。先生が果たせなかった「父親殺し」の問題を追求し、彼らをめぐる謎を読み解いていく。/「静」と「青年」の視点の話が面白かった。どちらも意外に食わせ者だったのだなぁと驚いた。2013/04/16

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