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大人の本棚
長谷川四郎 鶴/シベリヤ物語

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  • サイズ B6判/ページ数 273p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622080497
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C1393

内容説明

このふしぎに沈着な物語たちは、きのうかたるきょうのこと、のようでもありませんか。―敗戦前後の満州、シベリヤ抑留経験から紡ぎ出された珠玉の短篇。

著者等紹介

長谷川四郎[ハセガワシロウ]
1909年、北海道函館に生まれる。ジャーナリスト長谷川淑夫(世民)の四男。1936年、法政大学文学部独文科卒業。翌年、満州鉄道株式会社入社。大連や北京で欧文資料の収集整理、シベリヤ調査に従事。1942年退社後は満州国協和会調査部に入り蒙古班に所属。同年、アルセーニエフ『デルスウ・ウザーラ』を翻訳刊行。1944年3月、軍に召集され、ソ満国境の監視哨に配属。翌年8月よりチチハル、ついでシベリヤ各地の捕虜収容所を転々とし、1950年2月帰国。1954年、新日本文学会入会。1956年、安部公房、花田清輝らと現代芸術研究会(後の記録芸術の会)を結成。1987年没

小沢信男[オザワノブオ]
1927年、東京新橋に生まれる。作家、日本大学芸術学部卒業。大学在学中より「新日本文学」に加わり、以後、小説、詩、俳句、評論、ルポルタージュなど多ジャンルにわたる執筆活動を展開。著書『裸の大将一代記―山下清の見た夢』(2000、桑原武夫学芸賞)ほか
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おおた

9
文庫版なので「鶴」は未読。シベリアでは寒く原始的な重労働ばかりで、いまこの時期こそ読むべき。戦争に負けるとこうなるのを、改憲論者の方々は一度お目通しください。白眉は、威張り散らしていた佐藤少将がズルをして降格させられ労働しなければいけない身分に落ちる様。冷静な作者の視点は、佐藤少将の細かなインチキもソ連人の冷徹さも平等に描き出す。ソ連人も捕虜にすることが前提ではないので、全てがやっつけで、それゆえに残酷な結果も導きやすくなる。自身の体験も客観的・冷静な視線で描き出し、しんみりする中にも笑いがある。2014/12/07

relaxopenenjoy

5
読みたい登録消化。戦前戦後の作家の満州国境での勤務やシベリア抑留体験を元に描かれた短編集。読み始めてみるとぐんぐん引き込まれた。短編集「シベリア物語」「鶴」「赤い岩」からの収録。目を背けたくなるような残酷な描写や壮絶な戦闘シーン等はほぼ無く、どの短編も一見淡々と(しかも美しい文章で)描かれているように思うが、それでも極限の状態を仄めかす緊張感であったり、無情さ、やるせ無さが漂う。鶴 掃除人、林の中の空き地 が印象に残った。翻訳したデルスウザーラも読みたい。2020/03/12

空虚

4
まるで冬の朝、冷たい空気を肺にいっぱい吸い込む時のような清々しさ、みずみずしい文体。シベリア抑留体験者でも命を賭して、出来事の物語化に抗った石原吉郎とは別の回路で著者は書いている。物語を生きていゆくこと、開き直った人間の潔さが著者にはある。だからだろうか著者の描くシベリアは遠い。悪い夢を見ているかのようだ。もしかすると物語は、戦後社会との断絶を埋めるひとつの方法かもしれない。夢には続きがある、悪い夢は醒めないのだ。そして自分も、この夢のような作品に何度も連れ戻されることになるだろう、と予感している。2015/08/21

ぱせり

3
戦争の奴隷に変えられてしまった人たちの姿が目に焼き付く。茶色の平原のなかにただ一羽の白い鶴の姿(『鶴』より)、ぼうぼうの髪と髭の間から覗く青い目(『赤い岩』より)、それから、騎乗で去っていくモンゴルの人の姿(『ナスンボ』より)などが、浮かび上がってくる。2023/05/22

つーさま

1
久々の長谷川四郎。彼の作品、とりわけ「大陸もの」と呼ばれる作品群は、戦争文学の範疇に入れられることが多いが、一般にイメージするそれとは違って、自分のことなのに自分のことではないような冷ややかな印象を受ける。それは、敗戦前後の満洲やシベリヤが舞台ということとも関係しているのかもしれない。例えば、代表作との誉れ高い「鶴」は、国境の監視に従事する矢野と私のやりとりを中心に展開し、最後二人はそれぞれ違う道を辿るのだが、本来そこにあるべき感情の起伏が表に出ることはなく、あくまでも淡々と目に見えるものを語る。(続) 2012/11/25

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