カチンの森―ポーランド指導階級の抹殺

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  • サイズ B6判/ページ数 177,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622075394
  • NDC分類 234.9
  • Cコード C1022

内容説明

虐殺の原因と経緯、ソ連に同調した連合国の隠蔽工作、ゴルバチョフの沈黙、歴史家の責任まで簡潔に分析する決定版。スターリン体制を象徴する事件の真相。2008年、ハンナ・アーレント政治思想賞を受賞。

目次

序論
1 ポーランド分割とポーランド市民のソ連収容所拘禁
2 殺戮と追放
3 階級殺戮、すなわち階級浄化
4 カチンの虐殺―責任者たちを探して
5 ソ連のつく嘘と西側によるその隠蔽
6 ソ連の公式見解に甘んじる政治家と歴史研究者
7 ゴルバチョフの沈黙
8 カチン事件―歴史学と政治へのひとつの教訓

著者等紹介

ザスラフスキー,ヴィクトル[ザスラフスキー,ヴィクトル][Zaslavsky,Victor]
1937‐2009。レニングラードに生まれる。レニングラード大学で社会学を学び、母校で教鞭をとっていたが、1975年ソ連を出国、カナダに移住・帰化した。カリフォルニア、スタンフォード、ヴェネツィア、フィレンツェ、ナポリの各大学で政治社会学を教え、最後は亡くなるまでローマのルイス・グイド・カルリ社会科学自由大学の教授。専門は第二次世界大戦後のソ連(ロシア)・イタリア政治関係史。『カチンの森―ポーランド指導階級の抹殺』で2008年、ハンナ・アーレント政治思想賞を受賞

根岸隆夫[ネギシタカオ]
フランス政府給付留学生としてパリの国立政治学院で欧州政治史を学ぶ。専門は欧州全体主義研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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藤月はな(灯れ松明の火)

93
戦争の早期終結を図る連合国によってポーランド抜きで合意された独ソ不可侵条約。その結果、分断のポーランドで起きたソ連による「階級浄化」という名の虐殺。その責任は戦後、ナチスに押し付けられ、連合国によっても事実は隠蔽され続けた。後に読んだ『リンドグレーンの戦争日記』でも知っている人はいたのに・・・。隠され続けた現実の惨さと知らなかった恥、家族の無事を祈り、待ち、諦めた犠牲者の家族の気持ちを考えると涙しか出ない。喰い込むほど、縛られた縄、人生を物語る手付かずの遺留品、あまりの残虐さに項垂れる司教の写真に項垂れる2018/02/14

Miyoshi Hirotaka

24
ポーランドの指導階級がソ連に抹殺されたカチン事件。虐殺はナチスがやったように偽装された。連合国もこれに同調、戦後もソ連の肩を持った。第二次世界大戦の勝利勢力の一つとしてスターリンの共産主義を数えるのは戦勝国の論理。但し、敗戦国を絶対悪とするあまり、国家犯罪が隠蔽され、矮小化された。「一人の殺害は犯罪者を生み、百万の殺害は英雄を生む。数が神聖化する」は、チャップリンの「殺人狂時代」の台詞。戦後の軍事裁判では、事後法で約千名が処刑され、戦勝国の復讐心を満たした。だが、これは彼らの罪に対する免罪符ではない。2014/02/18

ののまる

17
50年前出版のサヴォドニーの著作と違うところは、ソ連が公開した機密文書の原文を多数利用し、それによって明かな戦後の英米政府を初めとする西洋諸国のソ連に遠慮して真相を隠蔽しソ連を助長させたこと、ソ連の徹底した恥知らずな隠蔽と虚言、ゴルビーの逡巡、各国のソビエト歴史研究者の追従の責任を強く糾弾しているところ。カチンの現場写真も多数載せられている。スターリンが同体質であるヒトラーと組んで独伊日ソ四国同盟が実現しようとした可能性も含め、まさにカチン事件の真相を追求することは、戦後の世界常識を覆すことになる。2015/12/30

ごまめ

14
1943年スモレンスク近郊の森で約4,400人ものポーランド人捕虜将校の銃殺体が埋められているのが見つかった。多くの状況的証拠から犯行はNKVDによるものと思われたが、折氏も二次大戦さなかソ連は事件の主犯がナチであるかのようなプロパガンダを行い、英米を中心とする西側政府はこの偽造を幇助した。近年になってロシアは本件が当時のスターリン政権による自国の犯行だと認めたが、未だ全ての情報公開を行ってはおらず、現代まで続く戦時下における国家が犯した犯罪の隠滅工作、歴史改竄のモデルケースとして興味深い。2014/11/29

春ドーナツ

12
「地下鉄サリン事件」を想起した。トップダウン方式による内在化された「悪」。「**浄化」という禍々しい文言に象徴される「人を人とは思わない」判断力停止状態。それは悪を肥大化させて不可視な「何か」を次々に産みだす。リトル・ピープルのように。著者は隠匿された公文書からの引用を重ねることによって、「事件」の非人間的要素をまざまざと私たちに突きつける。現在もリアルタイムで続く負の連鎖を断ち切るにはどうしたらよいのだろう。追伸。想像して考えてみること。2018/03/12

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