出版社内容情報
***
本書は、ソ連崩壊にともなうグラスノスチによって解禁された、ランダウ逮捕に関する KGB(秘密警察)資料を中心に、関連論考を集成し、ランダウの科学思想と彼の知られざる政治的叛逆の事績を明らかにするものである。ランダウの物理学的天才について知っている読者も、本書から得られる情報に驚きを禁じえないであろう。
わが国論壇最硬派の数学史家、大佛次郎賞に輝く孤高の物理学史家、そしてバフチン、トロツキイを軸に権力と文化の関係に挑むロシア研究者、という異色トリオが編んだ稀有の歴史ドキュメントである。
内容説明
20世紀ソ連科学界を代表する物理学者レフ・ランダウの名は、世界的名著とされるリフシッツとの共著『理論物理学教程』により日本でもよく知られている。また、1962年、凍結した路面での輪禍により重体に陥り死の淵をさまよった彼が、国際的医師団の懸命の治療によって一命をとりとめるや、“モスクワの奇蹟”として全世界に報道され、その回復を鼓舞するかのように同年ノーベル賞が授けられたことは、いまも人々の記憶に残っている。だが、この事故の四半世紀前にランダウが、ほぼ確実に抹殺されるはずだったもう一つの危機を生き延びてきたことを知る人は少ないだろう。1938年4月27日深夜、彼は内務人民委員部によって突如逮捕され、まる1年を獄窓に過ごさなければならなかったのである。本書は、ソ連崩壊にともなうグラスノスチによって解禁された、ランダウ逮捕に関するKGB(秘密警察)資料を中心に、関連論考を集成し、ランダウの科学思想と彼の知られざる政治的叛逆の事績を明らかにするものである。
目次
第1部 生の軌跡と学問(レフ・ダヴィドヴィチ・ランダウ(一九〇八‐六八)
若き日のランダウ―コペンハーゲン時代の思い出
ランダウをめぐる若干の回想
物理学に志す学生へのランダウの率直な助言 ほか)
第2部 政治的抵抗の記録(レフ・ランダウの最高機密生活;レフ・ランダウ―獄中の一年;ランダウの戦後政治思想―一九四七‐五七年)
著者等紹介
佐々木力[ササキチカラ]
1947年、宮城県に生まれる。1969年、東北大学理学部数学科卒業。同大学大学院理学研究科博士課程(数学専攻)を経て、1976‐80年、プリンストン大学に留学。Ph.D(歴史学)。1980年、東京大学教養学部講師、83年、助教授、91年以降、教授。専門は数学史を中心とする科学史・科学哲学。国際科学史科学哲学連合科学史部門理事、国際数学史委員会執行委員。著書『近代学問理念の誕生』(岩波書店、1992;サントリー学芸賞受賞)ほか
山本義隆[ヤマモトヨシタカ]
1941年、大阪に生まれる。1964年、東京大学理学部物理学科卒業。同大学大学院博士課程中退。現在、学校法人駿台予備学校勤務。著書『磁力と重力の発見』全3巻(みすず書房、2003:毎日出版文化賞、大仏次郎賞受賞)ほか
桑野隆[クワノタカシ]
1947年、徳島県に生まれる。1970年、東京外国語大学ロシア語科卒業。1972年、同大学大学院スラヴ系言語専攻修了。1979年、東京工業大学工学部専任講師、1981年、同助教授。1988年、東京大学教養学部助教授、1992年、同教授、1996‐2000年、東京大学大学院総合文化研究科教授を経て、現在、早稲田大学教育学部教授。専門は、ロシア文化・複合文化学
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MAT-TUN
takao
しとらす
fuku
小さな巨人