トラウマ・歴史・物語―持ち主なき出来事

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  • サイズ B6判/ページ数 209,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622071099
  • NDC分類 146.1
  • Cコード C1010

出版社内容情報

『トラウマへの探究――証言の可能性と不可能性』の編著者であり、心理学の概念である〈トラウマ〉を人文諸科学の世界に投げ入れ、思想的衝撃をもたらしたアメリカの気鋭の研究者キャシー・カルースの主著の邦訳が、ようやく成った。

『快感原則の彼岸』や『モーセと一神教』に述べられているフロイトのトラウマ理論、デュラスとレネの『ヒロシマ私の恋人』に描かれた個人の破滅の中の相互作用の物語、ド=マン、クライスト、カントのテクストにおける指示機能への考察と落下する身体の形象、そしてフロイトのテクストを分析する中でラカンが行なったトラウマに対する再考。著者はこれらの厳密な分析をとおして、遅延した体験としてのトラウマの物語と歴史の関係や、その語りの二重性、さらに他者の傷から発せられた声や言葉に耳を傾けること、その応答責任の重要性を、情熱的かつ冷静に描出してゆく。ポール・ド=マンの弟子でもある著者の筆さばきは、じつに鮮やかだ。

心理学・精神医学から文学・歴史・現代思想まで、既成のジャンルを横断して提示される、刺激的論考である。


キャシー・カルース(Cathy Caruth)
エモリー大学英文科・比較文学科教授および比較文学科主任。プリンストン大学卒業後、イェール大学比較文学科でポール・ド=マンの最後の学生の一人として学んだ後、同大学英文科助教授をへて、現職。専攻は英文学・批評理論。1995年に刊行された編著Trauma: Explorations in Memory, the Johns Hopkins University Press(邦訳、キャシー・カルース編『トラウマへの探究――証言の不可能性と可能性』作品社、2000)は、「トラウマ」概念を中心に、精神分析・文学・歴史などの領域に新たな可能性を問うた書として絶賛された。著書はほかにEmpirical Truths and Critical Fictions: Locke, Wordsworth, Kant, Freud (1990)などがある。

下河辺美知子(しもこうべ・みちこ)
成蹊大学文学部教授。文学批評理論およびアメリカ文学・アメリカ文化。著書『歴史とトラウマ――記憶と忘却のメカニズム』(作品社、2000)『トラウマの表象と主体』(共著、新曜社、2003)ほか。編訳書に上記カルース編『トラウマへの探究』のほか、ショシャナ・フェルマン『女が書くとき女が読むとき――自伝的新フェミニズム批評』(勁草書房、1997)などがある。

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関連書:
ハーマン『心的外傷と回復』
カーディナー『戦争ストレスと神経症』
中井久夫『徴候・記憶・外傷』

内容説明

“トラウマ”から何を読みとるか。フロイト『モーセと一神教』、デュラス/レネ『ヒロシマ私の恋人』、ド=マン、ラカンらを通して、問題の可能性を開示する衝撃作。

目次

第1章 持ち主なき経験―トラウマと歴史の可能性(フロイト『モーセと一神教』)(エクソダス、または出立の歴史;列車の衝突、または事故としての歴史 ほか)
第2章 文学と記憶の上演(デュラス、レネ『ヒロシマ私の恋人』)(見ることの裏切り;「私の言うことを聞いて」 ほか)
第3章 トラウマからの/への出立―フロイトにおける生き延びることと歴史(『快感原則の彼岸』『モーセと一神教』)(生き延びることと歴史;失われた経験 ほか)
第4章 落下する身体と指示の衝撃(ド=マン、カント、クライスト)(落下の世界;哲学の身体 ほか)
第5章 トラウマ的目覚め(フロイト、ラカン、そして記憶のエシックス)(夢の物語;意識と睡眠 ほか)

著者等紹介

カルース,キャシー[カルース,キャシー][Caruth,Cathy]
エモリー大学英文科・比較文学科教授および比較文学科主任。プリンストン大学卒業後、イェール大学比較文学科でポール・ド=マンの最後の学生の一人として学んだ後、同大学英文科助教授をへて、現職。専攻は英文学・比較理論

下河辺美知子[シモコウベミチコ]
成蹊大学文学部教授。文学批評理論およびアメリカ文学・アメリカ文化
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

nranjen

5
図書館本。どちらかといえば医学歴史的な『トラウマの歴史』を読んだ後で読むと、フロイトをあまりにも中心に据えて述べられているような印象も受けた。しかし精神的なトラウマの捉えどころのない性質についての考察は非常に面白く感じた。デュラスのヒロシマの分析も面白かった。しかし何よりも面白かったのは、フロイトとラカン自身も心理的トラウマを被った人たちであり、彼らの言説を彼らの被ったトラウマの描写を通して一歩退いた場所から描き出し、分析している箇所だろう。急ぎ読みなのでまた再び読む時間があれば良いと思う。2020/07/17

まりこさん

0
ホロコーストについて語るために読んでみました。 ド・マンへの理解が少し進んだ。2014/07/28

t78h1

0
岡真里さんが好きな人にはおすすめです2012/12/26

MAYU

0
結局、僕が過去のトラウマを思い出すのは、反復強迫なんですね。だから何度も鍵を確認したりするのと根っこは同じ。僕は一時期、何度も確認したりしていたこともあったのですが、この頃はなくなりました。ということは、トラウマも同じようになくなっていく日がくるのかもしれません。明るく生きましょう!2012/10/03

Annabelle K

0
非常に難しかった。ソシュール始めとする言語学が理解できていないためだと思う。しかし、フロイトのトラウマという概念が、普遍的に歴史や日常へ応用できることを知れてよかった。2023/01/23

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