出版社内容情報
原ロビンソンから現代まで、千を超える変形譚を時空間の中で分析した、物語の漂流をめぐる物語。
内容説明
1719年に世に現れたダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』は、数々の翻訳・模倣・簡略・改造版を生んできた。その数は優に千を超える。18世紀前半の直接的模倣譚から『スイスのロビンソン』など教育的ロビンソンの時代、『宝島』に代表される19世紀の冒険ロマン的ロビンソン、そして『ピーターパン』に始まる20世紀の寓意的あるいは反ロビンソンまで、著者は時代の観念装置を見据えつつ、個々の作品群の細部に入り込んでゆく。西欧の植民地主義から国民国家形成、そしてポストコロニアルと呼ばれる現代の時空間を舞台に展開される本書は、物語の漂流についての一つの物語である。
目次
序章 ロビンソン変形譚前史
第1章 ロビンソン変形譚第一期(1720‐1762)―直接的模倣(逃避型恋愛冒険)譚
第2章 ロビンソン変形譚第二期(1762‐1812)―教育的ロビンソン
第3章 ロビンソン変形譚第三期(1812‐1904)―冒険ロマン的ロビンソン
第4章 ロビンソン変形譚第四期(1904‐現代)―寓意的あるいは反ロビンソン
終章 放談と展望
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あかふく
2
『ロビンソン・クルーソー』はそれ自体でも簡略版、挿絵変更、翻訳など特に様々なバージョンがある作品であり、また様々なパロディや影響のあった本である。その作品が、ある意味常識的なことだが、時代によって異なる価値を持った作品として現れてくるあり方を追った本。はじめはユートピアもの、植民地主義的色、ピカレスクなどの色がありながら、単なる孤島物語になったり、ルソーの影響で教育的なものになったり、ときには真逆の意味を持たされたりもする。著者は自称(?)日本唯一の「ロビンソン学者」とのこと。2013/11/27
nbhd
1
愛すべきトンデモ本と出会ったな。著者のクルーソー熱が暑苦しくなるほど熱く、ちょっと困るくらいの代物。もはや人文科学の域を超越したエンタメ読み物としてもおもしろいし、もちろんクルーソーもののブックガイドとしても役立つ。でもまぁ、結語として「イデオロギーに絡め取られる可能的ロビンソンではなく、絶えず出口を探す現実的ロビンソンであれ」と言われても、やっぱ困る。2013/05/31
kabuki o.
0
「歴史研究者は、何事もはじめに変態ありき、ということを忘れてはならない。」2019/10/29