出版社内容情報
「1989年に冷戦が終わり、驚くべき一致で昭和天皇が逝去した。40年以上続いた冷戦の終了は何をもたらしたか。〈社会主義〉という壮大で過酷でもあった実験が失敗の烙印を押されて終わっただけではない。対抗社会主義であった福祉国家も終わった。ケインズ主義も終わった。そして、冷戦の文脈における日本の存在価値も終わった。冷戦における最前線基地であり、西側世界の一つのショウウィンドウでもあった日本は、それに関する限り〈無意味化〉した」(はじめに)
1990年以来、著者は『神戸新聞』に年に4回「清陰星雨」という連載を続けてきた。冷戦構造の解体から、阪神淡路大震災、オウム真理教、少年犯罪の数々、そして〈9・11〉。このような状況のなかで、この国の元気は次第になくなり、個人も家族も企業も社会も国家も、心の病を訴え、心のケアが主題となってきた。
精神科医・中井久夫はこの十余年をどのように見つめてきたか。連載エッセイのそれぞれに新たなサブテクストを書き下ろした47篇は、現代に生きる意味を立体的に伝える。
書評情報:
毎日新聞 2002.4.28 清水 徹さんが書評
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中井久夫(なかい・ひさお)
1934年奈良県に生れる。京都大学医学部卒業。現在 甲南大学文学部人間科学科教授。神戸大学名誉教授。
著書『中井久夫著作集――精神医学の経験』全6巻別巻2(岩崎学術出版社、1984-91)『分裂病と人類』(東京大学出版会)『記憶の肖像』(1992)『家族の深淵』(1995)『アリアドネからの糸』(1997)『最終講義――分裂病私見』(1998)『西欧精神医学背景史』(1999、以上みすず書房)ほか。
共編著『1995年1月・神戸』(1995)『昨日のごとく』(1996、共にみすず書房)
訳書にエレンベルガー『無意識の発見』上下(共訳、弘文堂、1980)のほか、みすず書房からはサリヴァン『現代精神医学の概念』『精神医学の臨床研究』『精神医学的面接』『精神医学は対人関係論である』『分裂病は人間的過程である』、ハーマン『心的外傷と回復』、バリント『一次愛と精神分析技法』、ヤング『PTSDの医療人類学』(共訳)、『エランベルジェ著作集』(全3巻)、パトナム『解離』、さらに『現代ギリシャ詩選』『カヴァフィス全詩集』『リッツォス詩集 括弧』、ヴァレリー『若きパルク/魅惑』などが刊行されている。
内容説明
冷戦の終結から阪神淡路大震災、オウム真理教、犯罪の数々、そして「9・11」…心のケアが主題となってきたこの10年に精神科医は何をみたか。エッセイ47篇。
目次
人間であることの条件―英国の場合
ささやかな中国文化体験
「故老」になった気持ち
戦後に勇気づけられたこと
ロシア人
花と時刻表
国際化と日の丸
一夜漬けのインドネシア語
ワープロ考
外国語が話せるということ〔ほか〕
著者等紹介
中井久夫[ナカイヒサオ]
1934年奈良県に生れる。京都大学医学部卒業。現在、甲南大学文学部人間科学科教授。神戸大学名誉教授
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