出版社内容情報
黒の堅い帽子に、地味な黒い埃っぽい服。大統領は、服装その他、市民のだれとも変わらない。ただ彫りの深い顔と、そしてその両の目は、いつも深い悲しみを、その底に湛えているように見える。――
南北戦争のゆくえを決したゲティスバーグの戦いの後のリンカーンの日々の表情を、詩人ホイットマンは、日記にそう記した。
歴史の主人公としての「人びと」の誕生を宣言した『リンカーン ゲティスバーグ演説』は、戦争の深い悲しみのなかから生まれた。
「われわれは子どもたちに、子どもたちのものであるべきだという理由で、ゲティスバーグの演説を、ちゃんと手渡すことができなければならない」(作家E・L・ドクトロウ)
※この、リンカーンの演説は、日本国憲法にとても深く関連しているのだ、ということを訳者の長田さんがいっておられました。そして、そのことは、ダワー『敗北を抱きしめて』にも紹介されているとのことです。
Michael McCurdy(マイケル・マカーディ)
今日、アメリカの良心を刻む、もっとも傑出した版画家の1人と目されるマカーディは、とりわけ子どもたちと大人たちを結ぶ絵本の仕事に、力を傾けてきた。『アメリカを歌うこと』(ホイットマンからウッディ・ガスリーまでの詩のアンソロジー)、『翼あるいのち』(ソローの散文のアンソロジー)など、マカーディの彫る黒と白の世界は、生き生きと、ストイックな力動感に充ちている。
Garry Wills(ゲリー・ウィルズ):(はじめに)
人びとを、人びとが、人びとのために、自ら律する国のあり方。――わずか272語、たった3分の演説が、どのように世界を変えたのかを精密に分析した『リンカーンの三分間』で、ピューリツァー賞。アメリカの理念をつくりだしたゲティスバーグの演説は「リンカーンの言葉が生みだした知的革命」だった、とした。
長田弘(おさだ・ひろし)訳
詩人。1939年福島市生まれ。代表的な詩集に『一日の終わりの詩集』『黙されたことば』(ともにみすず書房)『深呼吸の必要』『食卓一期一会』『世界は一冊の本』『記憶のつくり方』(ともに晶文社)など。「贈る絵本にこの本を選んだのは」と詩人は言う。「この絵本を手にしたという記憶を、できるだけおおくの人と共有したかったから」
内容説明
「人民の、人民による、人民のための政治」。誰もが知っているこの言葉で終わる合衆国大統領の1863年の演説は、今こそ読まれるべきではないか。マッカーディの考えぬかれた絵を配して、リンカーンの重みのある一語一語が、臨場感をもって読者の心に響いてくる。
著者等紹介
マカーディ,マイケル[マカーディ,マイケル][McCurdy,Michael]
今日、アメリカの良心を刻む、もっとも傑出した版画家の1人。子どもたちと大人たちを結ぶ絵本の仕事に、力を傾けてきた
長田弘[オサダヒロシ]
詩人。1939年福島市生まれ。代表的な詩集に『一日の終わりの詩集』『黙されたことば』(ともにみすず書房)など
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。