出版社内容情報
ラヴェルの『夜のガスパール』から第一曲「オンディーヌ」を弾き終わったとたんに、先生から「もっと濃艶に歌って弾くように」と注意された。でも、この曲を高踏的に、人に媚びず、自身の美しさで聴くひとを惹きつけずにはおかないように弾いてみたい。あたかもドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』のヒロインのように。
「この世にことさら男を誘う女と誘わない女の二種類がいるとすれば、明らかにオンディーヌは前者であり、メリザンドは後者である。(…)水の精とはどういうものなのか、オンディーヌはその中でどの部類に属するのか、音楽は彼女たちとどうかかわっているのか、ドラマ『ペレアスとメリザンド』は水の精の物語とどのようなつながりがあるのか。」(プロローグより)
この主題をめぐる逍遥はギリシャから中世をへて19世紀末にいたる。水のイメージと「ファム・ファタル(宿命の女)」の観念が結びついたとき、絵画、文学、音楽で続々とあらわれるヒロインたち。それを語る著者の筆致は颯爽として才気あふれる。
◇なお同タイトルのCD(キングレコード)が同時リリース、また記念リサイタルが11月に行われ,
ピアニストにして本を出版、そしてリサイタルという立体的な企画が多くのメディアの興味をひいている。
新聞文化欄への執筆、ラジオ番組への出演等々、精力的な活動によって、多くの人びとを惹きつけている。
書評情報:
坂下裕明さん/週刊朝日 2001.11.2号
川村二郎さん/読売新聞 2001.10.21
清水徹さん/毎日新聞 2001.10.21
東京新聞 2001.10
青柳いづみこ(あおやぎ・いづみこ)
ピアニスト、ドビュッシー研究家。現在、大阪音楽大学教授。フランス国立マルセイユ音楽院首席卒業。東京芸術大学大学院博士課程終了。安川加壽子、ピエール・バルビゼの両氏に師事。1980年東京デビュー。東京にて14回のリサイタル、全7回の《ドビュッシー・シリーズ》開催。CD『ドビュッシー・リサイタル』『雅なる宴』『ドビュッシー・リサイタルII』は、いずれも「レコード芸術」誌特選盤。著書『ドビュッシー=想念のエクトプラズム』(東京書籍)『翼のはえた指 評伝安川加壽子』(白水社、第9回吉田秀和賞)『青柳瑞穂の生涯――真贋のあわいに』(新潮社、日本エッセイスト・クラブ賞)『ショパンに飽きたら、ミステリー』(創元ライブラリ)ほか。
内容説明
誘う女と誘わない女?古来からの水の精のイメージ、文学・美術にわたるファム・ファタル像、ショパン、ドビュッシー、ラヴェルらをつらぬく驚きの文化論。
目次
第1章 水の精のイメージ
第2章 善い水の精と悪い水の精
第3章 創作された水の精
第4章 魔界と人間界
第5章 音楽になった水の精
第6章 『ペレアスとメリザンド』とおとぎばなし
第7章 『ペレアスとメリザンド』のドラマ構造
第8章 「宿命と女」と「つれなき美女」
第9章 メリザンドと水
第10章 水の音楽
著者等紹介
青柳いづみこ[アオヤギイズミコ]
ピアニスト、ドビュッシー研究家。現在、大阪音楽大学教授。フランス国立マルセイユ音楽院首席卒業。東京芸術大学大学院博士課程修了。安川加寿子、ピエール・バルビゼの両氏に師事。1980年東京デビュー。東京にて14回のリサイタル、全7回の「ドビュッシ-・シリーズ」開催。平成元年度文化庁芸術祭賞。CD『ドビュッシー・リサイタル』『雅なる宴』『ドビュッシー・リサイタル2』は、いずれも「レコード芸術」誌特選盤
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