解離―若年期における病理と治療

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ A5判/ページ数 471,/高さ 22cm
  • 商品コード 9784622041252
  • NDC分類 493.74
  • Cコード C3047

出版社内容情報

〈「解離」は1990年代以来、精神医学のもっとも白熱したテーマである。実際、精神科臨床の緊急問題であって、それは特に米国においてであるが、わが国において児童虐待、性的虐待、PTSDに関連して無視できない重要な臨床的問題となってきた。犯罪関連でも今後大きな問題となる可能性がある。しかも、解離は本書にあるとおり、診断も治療も非常に困難であって、現代精神医学に対する最大の挑戦の一つとなっている〉(「訳者あとがき」より)

本書は、「解離」を包括的に描いたはじめての書である。副題に「若年期における病理と治療」とあるが、これは主題の限定を意味するのではなく、解離性障害の多くが児童/青年期に受けた虐待や非道処遇と密接に関連しているからである。なかでも解離性同一性障害ともいわれる多重人格性障害では、その傾向が著しい。

著者は、長年の研究から、一見奇怪な解離性症状、たとえば複数の交代人格の出現なども、同一性の確立と基本的発達過程の挫折ととらえ、発達論的見地から病的解離を理解しようとする。正常な解離と病的解離のちがいや解離性障害の診断から、どのような治療を、特に発達途上の児童/青年に行なうべきかまで、現在のアメリカの研究を総動員した本書は、医師・専門家や被害者・関係者にとって不可欠の書となろう。児童虐待のニュースが毎日のように伝えられる一方、多重人格性障害についての誤った情報も夥しいこの国で、本書刊行の意義はきわめて大きいと考える。

J.L.ハーマン『心的外傷と回復』(みすず書房刊)とあわせて、ぜひ読んでほしい一冊。 

Frank W. Putnam(フランク・W・パトナム)
1947年に生まれる。1975年インディアナ大学医学部卒業、神経生理学の学位を取得後、イェール大学精神科で研修を行なう。この期間中にPTSDのベトナム帰還兵の治療を担当したことを契機に、トラウマ研究の道に進むことを決意する。その後NIMH(国立精神保健研究所、後に統合されてNIH国立保健研究所)研究員となり、多重人格性障害の研究に従事する一方、臨床コンサルタントとして活躍、1999年からはオハイオ州シンシナティの子ども病院付属メイヤーソン・センター所長に転出し、児童虐待防止プログラムの開発に携わる。著書ほ他に『多重人格性障害』(1989、邦訳、安克昌・中井久夫他訳、岩崎学術出版社、2000)がある。

中井久夫(なかい・ひさお)
1934年奈良県に生れる。京都大学医学部卒業。現在 甲南大学文学部人間科学科教授。著書『中井久夫著作集――精神医学の経験』全6巻別巻2(岩崎学術出版社、1984-91)『最終講義――分裂病私見』(みすず書房、1998)ほか多数。訳書にエレンベルガー『無意識の発見』上下(共訳、弘文堂、1980)のほか、みすず書房からはサリヴァン『現代精神医学の概念』『精神医学の臨床研究』『精神医学的面接』『精神医学は対人関係論である』『分裂病は人間的過程である』、ハーマン『心的外傷と回復』、バリント『一次愛と精神分析技法』、さらに『現代ギリシャ詩選』『カヴァフィス全詩集』『リッツォス詩集 括弧』、ヴァレリー『若きパルク/魅惑』などが刊行されている。最近作にはヤング『PTSDの医療人類学』(共訳)『エランベルジェ著作集』(全3巻)がある。

内容説明

解離とは、解離性障害とは何か。病因としての児童虐待や性的虐待から、多重人格性障害についての詳細な診断、発達途上の児童/青年に行なうべき治療まで。危急の問題に方向性を示す勇気の書。

目次

児童期心的外傷と非道処遇の本性と効果
非道処遇の転帰への影響因子と共通主題
解離序説
病的解離
外傷・解離・記憶
病的解離のモデルをめざして
「離散的行動状態」モデル
解離の発達的基盤
日常生活における解離と変成状態
解離症例提示―症例素描
臨床的現象学と診断
治療の哲学と原則
個人治療
解離性家族と家族外居住
精神薬理学

著者等紹介

パトナム,フランク・W.[パトナム,フランクW.][Putnam,Frank W.]
1947年に生まれる。1975年インディアナ大学医学部卒業。神経生理学の学位を取得後、イェール大学精神科で研修を行なう。この期間中にPTSDのベトナム帰還兵の治療を担当したことを契機に、トラウマ研究の道に進むことを決意する。その後NIMH(国立精神保健研究所、後に統合されてNIH国立保健研究所)研究員となり、多重人格性障害の研究に従事する一方、臨床コンサルタントとして活躍。1999年からはオハイオ州シンシナティの子ども病院付属メイヤーソン・センター所長に転出し、児童虐待防止プログラムの開発に携わる

中井久夫[ナカイヒサオ]
1934年奈良県に生れる。京都大学医学部卒業。現在、甲南大学文学部人間科学科教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

huchang

2
単著・単独翻訳という日米の化け物みたいな碩学の仕事。執筆当時不明な点を無理に論じず、わからんもんはわからんと言ってるので読みやすい。私が学校を出たての頃、解離はヒステリーやろ?って鼻で笑ってる先生もけっこういた。このころから退役軍人をはじめとする大人の解離、被虐待の子どもの解離に注目し、わからんもんはわからんが、そのままほっとくことはせえへんで?という姿勢で取り組んでいることが文章のあちこちから出てきていて、ロールモデルというにはおこがましいが、でもこうあれればいいなという気持ちでいっぱいになった。2023/06/05

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/328448
  • ご注意事項