辺境から眺める―アイヌが経験する近代

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  • サイズ B6判/ページ数 262,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622030898
  • NDC分類 316.811
  • Cコード C1010

出版社内容情報

日本とロシア、二つの国家の間で先住民族は何を見、経験したか。歴史観の変更を促す画期的試み。

今年もまた、日本とロシアの首脳のあいだで「北方領土問題」が議論された。しかし「北方領土」とは誰のためのものなのか。北方領土と呼ばれる島々や、かつては樺太という名だった現サハリンの住民は、二つの巨大国家の交渉を、どのように考えるのだろう。本書は、アイヌを中心に、日本とロシアという国家が先住民族を同化・差別化してきた歴史を詳細に追いながら、辺境という視座から、われわれの「いま」と「今後」を考える。

「植民地時代の探検家たちがおこなった旅は、帝都の中心から出発し、外に向かい、〈奥地〉にまでいたるものだった。彼らは、植民地支配をおこなう社会の物理的な武器ばかりでなく、知的な武器をも携えて、一つひとつ道を切り拓き、商人、入植者、伝染病がその後を追った。旅から持ち帰ったのは大量の原材料であった。鉱物のサンプル、民族誌学的〈骨董品〉、地図、未知の人びとの話、これらはやがて植民地支配権力がもつ拡張する知識体系のうちに編入されていった。本書でおこないたいのはこの過程を転倒する作業である。〈奥地〉の心臓部から、外に向かい、国家/国民的およびグローバルな帝都にまでいたり、帝都型思考様式を新たに問い直す方法を持ち帰る、そのような旅路への出発である」

著者はオーストラリア在住の気鋭の日本研究者。現代思想や近現代史・アイヌ問題など、その緻密な考察と開かれた問題提起は、じつに鮮やかである。戦前に樺太に住んでいた人たちとともにサハリンに向かう終章の紀行文もまた、みごとだ。


2005年8月下旬重版出来

著者:
Tessa Morris-Suzuki
1951年イギリス生まれ。現在オーストラリア国立大学教授。専攻は日本経済史、思想史。著書に『日本の経済思想――江戸期から現代まで』,(藤井隆至訳 、岩波書店、1991);Re-Inventing Japan: Time, Space, Nation,(New York, M. E.Sharpe,1998);「グローバルな記憶・ナショナルな記述」(「思想」1998年8月号)などがある。

訳者:
大川正彦〈おおかわ・まさひこ〉
1965年東京生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学、政治理論・政治思想史専攻。現在 東京外国語大学助教授。著書に『正義』〈思考のフロンティア〉(岩波書店、1999)、訳書にマイケル・ウォルツァー『解釈としての社会批判――暮らしに根ざした批判の流儀』(川本隆史との共訳、風行社、1996)がある。

内容説明

日本とロシア、二つの国家の間で先住民族は何を見、何を経験したのか。歴史観の変更をうながす画期的な試み。

目次

序 辺境から眺める
第1章 フロンティアを創造する―日本極北における国境、アイデンティティ、歴史
第2章 歴史のもうひとつの風景
第3章 民族誌学の眼をとおして
第4章 国民、近代、先住民族
第5章 他者性への道―二〇世紀日本におけるアイヌとアイデンティティ・ポリティクス
第6章 集合的記憶、集合的忘却―先住民族、シティズンシップ、国際共同体
終章 サハリンを回想する

著者等紹介

モーリス=鈴木,テッサ[モーリススズキ,テッサ] [Morris‐Suzuki,Tessa]
1951年イギリス生まれ。現在、オーストラリア国立大学教授。専攻は日本経済史、思想史

大川正彦[オオカワマサヒコ]
1965年東京生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学、政治理論・政治思想史専攻。現在、東京外国語大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

しゅん

14
大学生で読んだときは全く頭に入らなかったのだけど、史実記述と抽象的議論の繋がりが見えにくいからかもしれない。日本やロシアの近現代史に多少の知識がついた今回はある程度咀嚼できた。西洋諸国に支配されないように近代化・国民国家化せざるをえなかった日本。北方進出した際、アイヌを国家に取り込む論法として、「アイヌは日本の過去の姿だ」というイメージが採用された。アイヌは「過去」を背負わされた。イデオロギーの異なるソ連でも、似た状況が生まれた。境界における揺らぎや矛盾にこそ、ナショナリズムの本質が垣間見られる。2021/09/11

takeapple

7
凄く良かった。所謂北方領土は、日本のものでも、ロシアのものでもなく、アイヌをはじめとする先住民の居住地であり、国境って何?国家って何?ということを考えるようになります。ヨーロッパ的な考えが全てではないのだ。2015/03/25

ポルターガイスト

4
日露の狭間で翻弄されたアイヌなどの先住民に関する論考。すばらしい。名作だった。事情があってわりと速くページを繰ったがもっとみっちり読むべき本だった。日露の対アイヌ政策については差異よりも共通点を強調するかたちで描かれており,アメリカ合衆国やオーストラリアなど他国との比較などもふんだんにある。歴史総合・世界史探究・日本史探究のいずれにも役立つ視点が得られると思う。これで確実に一本授業がつくれるだろう。それにしても日本で歴史教員をやりながらアイヌ史に疎かったのは恥ずかしい。何冊か読もうと思います。2023/08/08

のんき

4
日本とロシアという国家がアイヌや周辺少数民族を同化・差別化してきた歴史を追うことで近代とはなんだったのかが描かれる。難しいけど面白かった。近代思想が生み出した歴史認識というものをきちんと勉強した覚えはないのに(それゆえ難しく感じる)、受けてきた教育や日常的経験を通して自分に根付いてしまっていることを自覚させてくれた(それゆえ面白い)。2009/09/08

Joao do Couto

3
先月読了。なんといっても、マイノリティがマジョリティに飲み込まれながらも、新たな文化を創り出し、それによってマジョリティを動かしていくというところが強く打ち出されているところが本書のキモ。最初は翻訳のせいか読みづらい気がした。パターン→パタン、みたいなものもあった。独特の雰囲気がある。2017/10/22

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