出版社内容情報
聖書の世界を舞台に展開する神と人間のドラマ。独創的な見解にあふれる最高傑作の明快な翻訳。
内容説明
ユダヤ=キリスト教の歴史を貫く人間の心の変容を、意識と無意識のダイナミックなせめぎあいを通して明らかにする。ユングの最高傑作を明快な翻訳でおくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
14
ヨブ記ってのはその奇妙さでよく文学作品のテーマになるが、本書はユングがヨブ記について考察を進める物語。一見キリスト教の神について考えているように書かれているが、実はユングの見てとった、当時の人びとにとっての神像について書いているということらしい。その辺が分かりにくく書いてあるから、キリスト教会側からあらぬ非難を浴びたとか。正統派キリスト教の内部から書いているのではまったくなく、もちろん教義的にはなんの議論を起こしうるはずはないのだが、書き方のあいまいさと、問題のデリケートさから誤読され続けているとのこと。2012/10/04
mass34
8
ユングの最高傑作。久しぶりに心理学に触れる。2016/07/04
roughfractus02
7
神が悪魔を使って理不尽な出来事を起こし、経験な男を苦しめる。この試練の物語に、著者は神自身の悪の面と、ヨブが自らを超えたのではないかという神の疑念を読む。そしてヨブ記自体に、旧約から新約へと展開するユダヤ・キリスト教での神の人間化の過程を見る。本書は、この物語の無意識(神)と意識(ヨブ)の構造を聖書全体に敷衍する。著者にとって聖書は、潜在意識の自己(キリスト)の人間化(受肉)に進む個性化の象徴的ケースと見なされる。象徴の真の意味を求めず、その構造を取り出すと、信仰する人々の心の進化過程が見えてくるようだ。2021/05/28
eirianda
7
今までのキリスト教の一神教的なイメージが、ユングにかかれば、異教と交じり合い、神が善だけでなく畏れも持ち合わせている、という風に変わっていく。仏教的であり、多神教的であり、結局のところ、宗教は人間の心が生み出したものなのだ、と再確認させられる。これを発表した当時はかなりの反発があったのだろうが、現在のクリスチャンはこの本をどのように捉えているのだろう。2013/12/17
レートー・タト
7
再読。この書に書かれている『ヨブ記』のヤハウェの扱い方については、色々と物議を醸しているようであるが、この書を読む上で特に注意深く意識して読まねばならないことがある。ユングがどういう意図でもってヤハウェを、いわば「コケクソにするような仕方」で書くのかが明確に記されている冒頭の断り書きと、彼が本書全体を通して明らかにしようとしている「神の人間化・人間の神化」の流れとのかかわりである。ユングが冒頭に書き記している自らの方法は、ただ単にヤハウェを貶めるためのものではない。2010/12/28