神谷美恵子著作集 〈4〉 ヴァジニア・ウルフ研究

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  • サイズ B6判/ページ数 282p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622006343
  • NDC分類 930.28

出版社内容情報

病跡学の視点から天才と狂気の交錯するウルフの内的世界を解明する。未刊の大著の予報的論文。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

寛生

63
【図書館】神谷が58歳で自死したヴァジニアウルフについて研究。やはり彼女の書いたものは何をいつよんでも、そのパイオニア的で情熱に溢れている。本書でも、ウルフの精神状態の描写から、メンタルヘルスのメインテナンスについて神谷独特の示唆があるのが素晴しい。ヴァジニアフルフ独特の狂気と創造、書くことと考えることについて神谷が研究を重ねる。存在と非存在のボーダーラインで書くウルフ。何よりもウルフの夫レナドの妻への介護と献身的な生き方が注目に値する。ウルフの自死をレナドも神谷も愛をもって包有しているのではないか。2015/01/27

燃えつきた棒

38
『波』(新訳版)で、6人の登場人物の内的独白を読んで、これらの人格が解離性同一性障害の別人格に見えてきてしまったことから、精神医学に携わる著者が、その辺りをどう分析しているかが知りたかった。 こんなに面白いとは思ってもみなかった。 読み終わった後の本書には、約30本の付箋が林立している。 これをまとめるのは一苦労だが、先日観た「ホンマでっかTV!?」で、脳科学者の中野信子が「努力できない脳」の話をしていて、いささか僕にも思いあたる節があったので、あまり無理をせず、今回もブリコラージュでお茶を濁したい。2021/08/17

のんぴ

34
ヴァジニア・ウルフ(VW)は読んだことがないが、神谷美恵子氏の「日記」に記されていた晩年の研究に触れてみたくて読了。VWの自制できない狂気(前駆症状=頭痛、思考の奔逸、不眠、無感覚、幻覚→神経症的鬱状態→重い鬱状態→躁鬱→今で言う統合失調症)が、愛する者の死、結婚当初の新生活への適応困難、作品完成に伴う「荷下ろし」状況、感冒、疲労、ストレスなどを誘因として、大波、小波のように押し寄せ、合間に書いた著作に、独自性や深みをもたらしていると考察。統合失調症で幼いころから周りに水玉が見えている画家の草間彌生を想起2023/10/02

ネギっ子gen

15
「あとがき」の執筆者・神谷永子氏によれば、米国の出版社に送った、神谷美恵子の(幻の大著になったが)『ウルフの病跡』のアウトラインには、『パンセ』の1章「人間は必然的に狂人である。狂人でないことは一つの他の形において狂人であることになるほど、それほどにも必然的に狂人である」が引かれていたとか。『パンセ』はわたしの高校生時からの愛読書。この箇所を読むことで、ウルフと神谷美恵子、そしてわたしとの重なりが見えてきた。また、月報で親友の明石み代氏の<一生を、内なるデーモンとの闘いに苦しめられた人間の戦死>に合点。⇒2021/02/06

あ げ こ

12
書かれた言葉、その文章のすべてを読み尽くそうとする。網羅しようとする。そうでなくては何も語り得ないのだと。何一つ断定する事は出来ないのだと。まるで生きるようにして読んで、己が身を以って、ヴァージニア・ウルフその人と関わろうとする。〈病と人と作品と〉、そう述べてもいるように、それらが密接に、分かち難く結び付いていること。かの人の生において。書くことの必然性。自己治療としての、或いは自らの見たもの、病を含むその体験と、自らの現在の距離をはかる手段としての創作。書くことこそが即ち生きることであったかのような…。2021/11/17

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