内容説明
地球規模での環境破壊が問題になり始めた七〇年代、アメリカを中心にエコロジー運動の哲学的・倫理学的基礎の解明をめざして生まれた思想―それが環境倫理学である。本書は、環境倫理学の三つの基本主張:自然の生存権の問題、世代間倫理の問題、地球全体主義の紹介から説き起こし、対応を迫られている様々な環境問題について、どのように対処すればよいのかを具体的に提言する、本邦初の「環境倫理学」入門の書である。
目次
環境倫理学の三つの基本主張
「中之島ブルース」―または人間に対する自然の権利
世代間倫理としての環境倫理学
地球全体主義の問題
日本の使命
人口と環境
バイオエシックスと環境倫理学の対立
ゴミと自然観
世代間倫理と歴史相対主義
未来の人間の権利
権利はどこまで拡張できるか
アメリカの自然主義と土地倫理
生態学と経済学
再考、再興、自然主義!
著者等紹介
加藤尚武[カトウヒサタケ]
1937年東京生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。千葉大学教授などを経て現在、京都大学文学部教授。専門は生命倫理学、環境倫理学、応用倫理学。93年、「哲学の使命」(未来社)で和辻哲郎文化賞受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハチアカデミー
9
本書の批判は、刊行から20年がたち社会的な前提が変化しているにもかかわらず、現在性を持ち続けている。科学技術が大きく変化しているにもかかわらず、相も変わらず人間は自分たちを抑制することなく、むしろエコノミックアニマルとしてよりいっそう悪化の道を歩んでいる。倫理的正しさが必ずしも絶対であるとは思わない。むしろ二項対立の前で戸惑うことが大切。一歩立ち止まることすら出来ない現代を省みると暗澹となる。永遠の進歩願望は「何を切り捨てるのか」という思考へ向かない。安易な希望は思考を停止させる。考え続けろということか…2014/03/20
Kazuo
6
本書は、生命倫理学と環境倫理学には180度の対立が含まれるという。前者は「個人の自己決定」を最上の原理とするのに対し、後者では「人類全体の生存可能性」を最高原理とする。本書ではその対立の結論は出さず「環境問題の最終的な解決は、あらゆる社会が成長体質を脱却すること」であると結論付ける。資源と環境の有限性を考慮すれば、それは事実そのものであるが、我々の政治・経済・国家システムが「成長なし」という世界に耐えられるように変化できるのであろうか?可能性さえ見えていないが、我々は否応なくその問題と向き合うことになる。2016/10/23
茶幸才斎
2
昨今は、専ら世界的経済危機の回避と市場の安定成長確保が重要課題とされる。かつてあれほど環境問題と持続可能な社会についての議論が盛んだったというのに。明日を夢見て額に汗する我々は、皮肉にも、今の暮らしと未来の地球環境との関係に思いを馳せる習慣を持たず、現在の暮らしぶりに執着するのだ。少なくとも自分の子には今よりよい世の中を残してやりたい。そのための努力はしたい。現代人が未来の地球(人)に対して負うべき責任とは、単純にその延長だと思う。まあ、最近新車を買い、その加速のよさに嬉々としている私が云うのもなんだが。2013/08/12
アロハ😉
1
環境保護を早急にしなければならないと思った。 また資源を使わないようにするのは、とても難しい。 様々な歴史や正義感、思想、宗教が絡まって環境倫理学は成立すると思った。2020/02/02
K
1
名著。2011/04/27