出版社内容情報
2018年2月に没した文学者・石牟礼道子。その晩年に誰よりも近く寄り添ったジャーナリストが描く知られざる「最期の日々」。
内容説明
「密着取材」と「渾身介護」で神話的作家の最晩年に寄り添ったジャーナリスト入魂の最新評伝。読売文学賞受賞後第一作。
目次
第1章 二月、道子さんを送る(一輪の花;神に嘉された人 ほか)
第2章 かけがえのない日々(熊本地震;近代百年の痛み ほか)
第3章 道子さんがいない(同伴者たち;サクラの花 ほか)
第4章 記憶の渚(保存会の四年;天上と海底と ほか)
著者等紹介
米本浩二[ヨネモトコウジ]
1961年、徳島県生まれ。徳島県庁正職員を経て早稲田大学教育学部英語英文学科卒業。在学中に『早稲田文学』を編集。毎日新聞記者。石牟礼道子資料保存会研究員。著書に『みぞれふる空―脊髄小脳変性症と家族の2000日』(文藝春秋)、『評伝 石牟礼道子―渚に立つひと』(新潮社刊)で第六十九回読売文学賞「評論・伝記賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
35
石牟礼道子の近況を伝えようと、2014年4月から毎日新聞で連載が始まった『不知火のほとりで』は、道子が亡くなったあとも連載が続き、今年の2月に70回で完結した。その連載から抜粋された本書は、だから、生前の道子のことがリアルタイムで書かれてもいる。『評伝 石牟礼道子 渚に立つひと』を書いた信頼によるものか、晩年の道子のとても近くにいることができた米本浩二の、近くにいた者にしか書くことのできない、優しく愛情のこもった描写に静かに胸打たれる。(つづく)2019/08/22
シュシュ
23
石牟礼さんの私生活についてはあまり知らなかったので、自殺未遂の経験があったことに驚いた。水俣病支援にあれだけ力を注ぐことができたのは、おもかさまの孫であったことや、自身の中にもこの世とうまく折り合いをつけられない部分があったからかと思う。苦界浄土のおかげで、水俣病患者以外の人も、水俣病被害の苦しみを知ることができた。改めて石牟礼さんの存在の大きさを感じた。利益・効率重視の社会には違和感を持ち続けたい。2019/09/08
フム
23
2014年4月から石牟礼さんの近況を伝える毎日新聞の連載が始まった。筆者はその取材で足しげく石牟礼さんを訪ね、介護の一旦を担うまで、その最後に寄り添い見届けた。「道子と書くと万感胸に迫って背筋が硬直し…途方に暮れる」と書いている。喪失感の深さが伝わってくる。周りの人間にそれほどの思いを抱かせる石牟礼さんの魅力は何だろうかと考える。孤独こそが道子の文学的源泉だと編集者であり最大の同伴者渡辺京二さんは言及してきたという。「生まれたときからこの世とうまくいっていない。それが石牟礼道子の本質」…2019/08/17
チェアー
14
石牟礼さんは、だれにでも寄り添える人ではない。壮絶な孤独と向き合い、常に自分の生命を投げ出すことを考えている人だった。その激しさがあるからこそ、世界を救済(本人はそうは思っていない)できる人だったのだろう。改めて渡辺京二さんの存在の重さを感じるとともに、筆者の孤独を感じる。孤独を知るものは、孤独を知るひとしか信用できなくなる。徹底的に孤独のなかに置かれたからこそ、ほんの少しのぬくもりに気づくことができたのだろう。2019/07/19
みよちゃん
7
故郷でもあり、同じ時期両親を亡くし、石牟礼さんの周りにこんなにも人を惹きつける事に心打たれた。2019/08/27