出版社内容情報
16000人以上が未来を奪われた強制不妊手術の問題に迫るドキュメント。2018年度新聞協会賞受賞キャンペーン、待望の書籍化。
内容説明
障害者は、子どもを産んではいけないのですか?かつて2万人以上の「障害者」が不妊手術を強いられた。国家による“命の選別”はなぜ行われ、なぜ放置されたのか。衝撃のドキュメント。2018年度新聞協会賞受賞!
目次
プロローグ―一刻も早く一人でも多く
第1章 奪われた「産む権利」
第2章 消えた記録
第3章 加害者は誰か
第4章 被害者救済と補償
第5章 優生保護法が問うこと
エピローグ―「同じ未来」を描けるか
巻末資料
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかむら
39
優生保護という法律のもと行われた戦後最大(と言っていい)人権侵害の実態。この問題を最初に取り上げた毎日新聞が全都道府県に公開請求した調査報道をまとめた本。読み応えあり。障害者や人権に対する意識はこの半世紀でどんどん変わってきたのに、置き去りにされていた被害者たち。変わったと思ってる自分の中にまだある優劣の意識にぐさりと刺さる。明日は仙台地裁で判決が出ますが、国がきちんと責任を認めるのかに注目。2019/05/27
遊々亭おさる
23
当時の医学では、遺伝が原因と考えられていた精神疾患者に強制を伴う不妊手術を施し、障害者の根絶を謳った優生保護法。その成立の背景から今日の国に賠償を求める裁判までの流れを解説し障害の有無に関わらず、憲法で認められた幸福を追求する権利を行使できる社会の在り方を読者に問いかける一冊。バリアフリー化が進む現代においての知的障害を持つ女性の母親の「娘に不妊手術を受けさせたい」という切実な思いは、法律が変わって良かったねという安易な気持ちに冷水を浴びせられる。本書は我々も隠し持つ優生思想と向き合うことを要求している。2019/04/17
ひねもすのたり
16
子供の頃、産婦人科の看板に書いてあった「優生保護法指定医」ってこういう事だったんだと納得。 本書は障碍者に不妊手術を強制していた旧優生保護法のあり方を問う毎日新聞のルポルタージュ。「民族の逆淘汰」などと発想する議員とか、予算執行のためになりふり構わない役人とか・・それらは事実としてあるわけですが、問題の本質はその事実を知って憤っている私たちの心のなかにあるのではないか? 読む前は昭和史の暗部的なものを想像していましたが、思った以上に考えさせられました。 最近読んでないけどやっぱ新聞ってスゴイわ。★4.52019/07/29
チェアー
16
ずさんな判断と手続きで、未来を奪われた人が多数いた。当事者が障害者ゆえに訴えでることもなく、世の中からは忘れ去られたまま。こんなことが戦後の90年代まで続いていたなんて。前後、知らないことだらけで、自分も障害者の未来を奪う側にいるのだと実感する。9歳の子どもが不妊手術なんて、ナチスよりひどくないか。2019/05/16
パンダ女
12
1948年に成立した優生保護法は女性解放運動に努めていた加藤シヅエ等により提出され、中絶や強制不妊を合法化した。残酷な人権侵害が公然と行われていたわけだが、当時は法律として存在していた以上、割と普通のことで医者も疑問を持たずに手術を行った。毎日新聞も精神障害者が犯した事件に言及して「危険な障害者が野放しだ、収容施設を」という記事を載せるほど偏見を煽っていたのは恐ろしい。障害者の母親が、娘が心配だから不妊手術を受けさせたいと言っていたのが印象的だった。でも、知らない間に子供産めなくなるって本当に悲しすぎる。2020/08/08