内容説明
二〇三高地、ノモンハン、ガダルカナル、アッツ・キスカ…精鋭ゆえに常に最激戦地に投入された旭川第七師団の奮戦をモデルケースに、軍中央の場当たりな作戦指導、情報・補給の軽視、指導部と現場の齟齬など昭和陸軍の“失敗の本質”、日本型組織の致命的欠陥を具体例で検証。
目次
“軍都”旭川を訪ねて
旭川帰還が一転、ガダルカナル島へ―一木支隊壊滅
対米戦に反対した旭川出身の“空の軍神”加藤達夫
旭川“北京”構想から生まれた第七師団
二〇三高地を駆け登った第七師団兵士
旭川第七師団ゆかりの文学者たち
ある屯田兵家族の物語
シベリア出兵と第七師団
尼港事件と北樺太保障占領
海軍航空隊黎明期の至宝、赤石久吉の人生〔ほか〕
著者等紹介
保阪正康[ホサカマサヤス]
ノンフィクション作家・評論家。「昭和史を語り継ぐ会」主宰。1939年札幌市生まれ。同志社大卒。昭和史の実証的研究のため、延べ四千人に聞き書き取材を行い、独力で『昭和史講座』の刊行を続ける。2004年に第52回菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
123
北海道の旭川第七師団は屯田兵をルーツに持つ。日本開国より仮想敵国であったロシア。北辺にある第七師団は寒冷地での戦闘訓練を繰り返し対ロシア戦の準備を進める。日露戦争の二百三高地での勝利により第七師団は最強と評される。それ故に、その後の歴史は辛苦を極める。ノモンハン、ガダルカナル、アッツ、沖縄、占守、樺太。激戦地の連続と北海道分割の阻止。最強の名のもと、参謀本部に良いように使われてしまったとも言える。全編を通じて浮かび上がるのは参謀本部の人命軽視。現場を知らない高級参謀の罪は重い。自責の念は無かったのか。2019/08/06
あにき
5
電子版。旭川7師団の戦いの歴史の俯瞰。屯田兵時代から8月15日以降の対ソ戦まで。明治の離宮としての北京構想、アッツ島の先住民アリュート族、海軍航空隊黎明期の赤石少佐などの話が個人的に目新しかった。かねがね大本営の兵員輸送に付いて疑問に思っていたが、ある参謀が、3分の1が辿りつけばいいほうだとの説明したということがあとがきに書かれていた。当初からそういう認識であるならばむべなるかなであるが、そうした立案自体、バカげたことだ。2015/02/25
メロン泥棒
4
旭川の第7師団の話しだけに集中して読むと近代史の断面として面白かった。全体としては様々なエピソードが集まりすぎてちょっとまとまりがかけてしまっている気がするが、上層部の判断で簡単に命が左右される兵卒の悲哀を綴った読み物としては良い。2011/02/16
こな
4
「北京(ほっきょう)構想」という言葉や、北海道分割の危機とか、この本で初めて知りました。2010/07/12
親父
3
ソ連に対しての備えのはずだった旭川第7師団が机上の駒のように南方で命を散らせていった。2009/01/06