出版社内容情報
"合田雄一郎"シリーズ最新刊!
2002年クリスマス前夜。東京郊外で発生した「医師一家殺人事件」。衝動のままATMを破壊し、通りすがりのコンビニを襲い、目についた住宅に侵入、一家殺害という凶行におよんだ犯人たち。彼らはいったいどういう人間か?何のために一家を殺害したのか?ひとつの事件をめぐり、幾層にも重なっていく事実。都市の外れに広がる<荒野>を前に、合田刑事は立ちすくむ― 人間存在の根源を問う、高村文学の金字塔!
「この身もふたもない世界は、何ものかがあるという以上の理解を拒絶して、とにかく在る。俺たちはその一部だ」
犯行までの数日間を被害者の視点、犯人の視点から描く第一章『事件』、容疑者確保までの緊迫の2ヶ月間を捜査側から描く第二章『警察』を収録。
内容説明
クリスマス前夜の「一家四人殺し」―数多の痕跡を残しながら、逃走する犯人たち。翻弄される警察組織の中で、合田がふたたび動き出す。
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイ@2019.11.2~一時休止
141
合田雄一郎刑事その5。前作の福澤彰之とのコラボでないからここまでは久しぶりにイイ感じ。下巻に続く。2016/01/23
文庫フリーク@灯れ松明の火
137
《スタッフ募集。一気ニ稼ゲマス。素人歓迎》求人裏サイトの書き込みに《仕事先ハ、現金輸送車トカ、デスカ?》と問う男。《ATMノホウデ、ドウデスカ?》と答える男。族上がりの井上克美と歯痛持ちの戸田吉生、共に前科持つ二人の出逢いは、後先考え無しの犯罪の果てに、歯科医一家4人殺しを引き起こす。時はクリスマスを控えた2002年12月。被害者となる歯科医一家の娘・あゆみと、加害者井上・戸田それぞれの視点・思考が交差する大1章。そして地道な捜査を延々と描きながら、飽きさせない筆力。私にとっては『李歐』以来の高村薫さん→2013/06/26
財布にジャック
107
被害者の語り、そして加害者の語り、警察の捜査の状況と、相変わらず読書初心者を寄せ付けない高村さんらしい独特の表現で、坦々と物語が進んで行きます。きっと練りに練られた文章だからこそ、読み手はさらっと読み流せず、つまづいてしまうのですね。本当に、高村さんの本のハードルは高いです。そして、今回は内容も暗く辛い事件が題材なだけに、いつも以上にエネルギーもいります。でも、下巻で全てを明らかにさせて貰えると思うと、途中でやめるという選択肢は絶対にありません。高村さんにしっかり付いて行きます。2013/04/09
みんと
106
初 高村薫でスリルを期待して読み始めたものの、後半に進むにつれなかなかページが進まず間延びした感じになってしまった。 幸せな家庭の代表のような高梨家の日常の風景から始まり、その温かな描写に感情移入していただけに、惨殺事件の被害者となった展開には気持ちがついていけなくなってしまった。2014/02/03
紅はこべ
80
『レディ・ジョーカー』以来の髙村薫。数学オリンピックを夢み、『赤と黒』に熱中する、ティーンエイジャーになると同時に女になった少女のキラキラした内面と、二人の男の汚泥感、閉塞感の差の凄まじさ。髙村薫が少女の内面を描くとは意外だった。久し振りの合田。犯人の一人は靴フェチだが、合田の靴も相変わらずピカピカかしら。今回は初日に現場に行ったきりで、後は殆ど屋内だしね。警察小説のリアルさといえば、東は横山秀夫、西は髙村薫かな?2014/12/30