内容説明
「風の歌を聴け」でデビューした村上春樹。戦後日本のアメリカ化を嘆き、「限りなく透明に近いブルー」を批判した江藤淳―あれから三十年、アメリカと日本の距離はどう変わったか。ポップとしてのアメリカ論。
目次
村上春樹の「風の歌を聴け」に出会った頃
一九八〇年の『ライ麦畑』
野崎孝訳と村上春樹訳の間に
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の「You」の向こうにあるもの
phonyからフォニィへと意味されるもの
アメリカと「寝た」と江藤淳は言う
「アメリカ」の影の中で
村上春樹の新訳『グレート・ギャツビー』・小島信夫の死・大江健三郎
著者等紹介
坪内祐三[ツボウチユウゾウ]
1958年東京生まれ。早稲田大学文学部卒。文芸評論家。編集者を経て執筆活動に。’01年『慶応三年生まれ七人の旋毛曲り』(マガジンハウス)で第17回講談社エッセイ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
west
5
『ギャツビー』がコンラッドの『闇の奥』に基づいていて、コッポラは『地獄の黙示録』よりも前に映画版ギャツビーの脚本を担当していたというのは知らなかった。2020/08/28
KA
2
『アメリカ 村上春樹と江藤淳の帰還』(2007)を読んだ。坪内祐三の著作は二冊目ですが、いやー良いですね。筆致は軽いし、分析も深まっていかないのだけど、とにかく着眼点が抜群に良い。切り取り方と読み方のセンスの良さったらない。ファンになっちゃうよ 突っ込んでいかないところがもったいなくもあり、同時に贅沢ですよね。江藤淳のアメリカ滞在記の公衆電話エピソードなんて、『ノルウェイの森』ラストシーンまんまなのに、そこには触れずにすっ飛ばしてひょいひょい進む。そんなのわかるでしょ、ってことなのかなぁ。。2021/01/10
hf
2
最後の一文がすごいような。。後半の江藤淳について書かれたところで加藤典洋『アメリカの影』を参照して江藤は単純な反米ではないとあり、『なんとなくリベラル』では江藤は反米と書かれてなかったっけ、となって混乱した。182ページ、「なんとなくクリスタル」についての反応として、先行世代、60年安保世代や全共闘世代といった反米の人たちから強く批判されたとある。2020/12/30
なすび
1
まあ面白いことには面白いんだが、坪内祐三のこういうテーマ批評はあんまり良くないな。根本にさして「哲学」がない、好事家的、ノンポリ的な人だからか、テーマをまとめきれていない。個人史を絡めた歴史を描かせると抜群なんだが。2020/06/30
mooroom7
1
面白く、一気呵成に読了しました。著者得意の書誌学的知識小ネタ満載で、へーそうなんだ、とうなづくこと多し。春樹とフィッツジェラルドの関係を当初から見抜いていた慧眼を自賛。そして、江藤淳とフォニイ論争、そしてフォニーと言えばサリンジャーと来る。堪えられない。アメリカの世話になって(ロックフェラー財団)遊学させてもらった戦後文学者たちの系譜。大岡、福田、阿川、小島、庄野、安岡、さらに江藤、有吉と列挙されていて壮観ですらあるな。 副題にでている江藤と春樹の関連性は如何、遺憾。2015/03/17