内容説明
仁科芳雄と本多光太郎―西欧に比べ、はるかに遅れてスタートした日本の近代化は、とくに科学技術の研究で、世界の水準に並ぶまでには大変な努力が必要でした。物理学のような基礎科学の面で、世界に誇れる成果が日本で生まれるようになるのは、やっと20世紀にはいってからでした。仁科芳雄と本多光太郎は、この時期の代表的な科学者です。のちに理化学研究所の所長になった仁科は、そこで湯川秀樹や朝永振一郎はじめ多くの理論物理学者を育て、また磁石鋼の発明で世界に名を成した本多は、東北大学に金属材料研究所を創設し、金属研究者の育成に当たりました。この2つの研究所の設立は、ともに第1次世界大戦中のことでしたが、この時期に成功した研究所として知られています。そしてそのどちらもが、それまでばらばらだった日本の技術・工学と、基礎科学の結び付きを深めました。これらの功績により、のちにこの2人は、あい前後して文化勲章を授与されています。
目次
仁科芳雄(日本の物理学;理化学研究所;サイクロトロンと原子爆弾)
本多光太郎(実験の鬼;KS鋼)
感想・レビュー
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くままつ
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本多光太郎について知りたくて読む。2つの戦争をまたいだ科学者たちの話であり、科学者からみる戦争も描かれているように思う。純粋に徴兵から門下の若い研究者を守りたい先生の思いも描かれていて、しかしそのために軍事協力をして技術を進めていく戦時中の技術発展の姿も描かれている。当時の西洋を超えたいとじりじりしていた先達の姿もあり、研究の鬼と呼ばれながら世界一の磁石を発明していった本多の姿があり、太平洋戦争で研究の肝を奪われた仁科の姿があり。当時の科学に臨む学者の情熱とか思いがずっしりと感じられる一冊だった。2013/06/02
ipusiron
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1997/7/14読了