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百年文庫

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  • サイズ B40判/ページ数 181p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121481
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

「落ちるところまで落ちた」―そんな思いで住みついたアパートみどり荘で、川上は隣室の若い女にふとした好奇心を抱く。憐れみから惰性へと関係を深めてしまう男女のあやうさ(丹羽文雄『交叉点』)。執筆のためカンヅメにされた旅館で、あれやこれやと「私」を世話する仲居の鈴音にはもう一つの顔があった(舟橋聖一『ツンバ売りのお鈴』)。零細映写機会社の支社長と事務員。恋して暮らして二十年、別れを迎えてなお高まる愛しさ(古山高麗雄『金色の鼻』)。ときに不可解な男女の性愛を描いた三篇。

著者等紹介

丹羽文雄[ニワフミオ]
1904‐2005。三重県の浄土真宗の寺の長男として生まれる。早稲田大学卒業後、いちどは僧職に就くも『鮎』の好評を機に上京し、作家活動に入る。代表作として『蛇と鳩』(野間文芸賞)、『顔』(毎日芸術賞)、『一路』(読売文学賞)など

舟橋聖一[フナハシセイイチ]
1904‐1976。東京・本所生まれ。東京帝大在学中に劇団を旗揚げし、戯曲『白い腕』で文壇デビュー。終戦後は『雪夫人絵図』などの風俗小説で人気を得た。代表作に『悉皆屋康吉』『花の生涯』、『好きな女の胸飾り』(野間文芸賞)など。日本文藝家協会の初代理事長としても活躍した

古山高麗雄[フルヤマコマオ]
1920‐2002。朝鮮・新義州生まれ。1942年召集され、南方を転戦しラオスで終戦。復員後は出版社勤務を経て、「季刊藝術」同人に。戦犯容疑で収容された刑務所体験を描いた『プレオー8の夜明け』で芥川賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

モモ

50
丹羽文雄『交叉点』色々なことがあった川上は東京に戻り同じアパートに住む友子と出会う。友子は米兵相手の売春婦だった。天涯孤独な友子がヒモ男につかまったり、不幸になっていくさまが辛い。舟橋聖一『ツンバ売りのお鈴』旅館にカンヅメし原稿を書く私の周りで起こる不可思議な出来事。それに女中のお鈴が関係していた。この話は肌よりも嘘だと思う。古山高麗雄『金色の鼻』結婚し20年一緒にいてもわかりあえない花恵と昌三。色々事情がありそうな花恵を追求することなく、肌のみ近い。どの話も終戦後の復興をはたした頃の話で興味深い。2020/08/10

神太郎

38
全体的に漂うアダルトな感じがいつもの百年文庫とは趣を変えます。男女の摩訶不思議な関係性。『交叉点』。どう考えても登場する男全員ダメなやつら。でも、そこに尽くしてしまう女もいて。ラストは男はいいが残された女性を思うと……。『ツンバ売りのお鈴』は痛快な女性だ。だが、手癖は悪い。そんな女性にうまい具合に翻弄される主人公。『金色の鼻』は離婚した男女を描く。思うに男が思うほど女の人は弱くはない。むしろ、未練を語るのは男の方だと最近は思う。短編ながら男女の心の揺れがみてとれ、大人に読んでもらいたい一冊だなと思う。2020/01/11

slowlifer

33
悪気はなくても相手を傷つけ苦しめることがある。さすらい続ける宿命と言えば軽すぎ、生きる決意の不足と言えば重すぎる。人生の交差点。行き交い、出会い、さまよい、歩く。時代は終戦後の貧しさやわびしさが漂う市井の片隅。自分の暮らしで手一杯のあどけない毎日。生きるためにそうせざるを得ない女性。豊かさの目的をふと思う。贅沢のためではない。自分らしく、人間らしい暮らしをするためだと思う。一方、成熟し豊かさにまみれたが故に失うものもある。身の丈に合った幸せをふと考える。2017/02/04

19
丹羽文雄「交叉点」舟橋聖一「ツンバ売りのお鈴」なぜか豆腐屋小町のヤンおばさんを語呂から感じた。古山高麗雄「金色の鼻」の三篇。貧しさや学のなさで犯罪や苦界に追い込まれる女性が多いのがしんどい。また作者が男子でそういう時代だから描き方が同じ人だと思ってない感じでなあ。しょうがないけど。893が「弱者救済のために斡旋してやってんじゃねえか」と嘯くのと変わんないんだよなあ。2021/06/05

星野

15
とても読みやすい。何年経っても男は男、女は女。丹羽文雄『交叉点』が好き、というか印象的でした。この作品に関しては、ただの男女のいざこざ、とは一概に言えない妙な切なさを感じました。著者の他作品を読んでみたい。2017/01/04

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