出版社内容情報
知の諸領域に君臨する自己準拠的な〈絶対〉の支配から脱却し，混沌と無秩序からの秩序生成のイメージを，ゆらぎにみちた〈多様体〉の結合として鮮明に描き出す。
内容説明
物理学、数学、幾何学が起源において辿った道を追跡しつつ、無秩序からの知の生成をゆらぎにみちた〈多様体〉の結合として捉え直し、自然科学と人文科学の間の知の横断路を探る。〈局所的なもの〉と〈大域的なもの〉の間に横たわる最大の難関・北西航路に挑む。
目次
遠歩き
第一の航路（注目に値することではあるが、そこから何ごとも起こらない；正確で人間的；固体、流体、炎；空間と時間；歴史―世界と場所、妨害）
遠歩き（散歩によって展覧会の絵の検討が行なわれる）
第二の航路（妨害―認識論；科学史；幾何学の起源）
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひばりん
11
北西航路とは北太平洋からベーリング海、カナダ以北の北極多島海を経て北大西洋へと抜ける航路である。人類による制覇は20世紀になってから。多くの冒険家が命を落としたこの航路になぞらえて、セールは厳密科学と人文科学を繋ぐ新航路探検の旅に出る。『分布』で棄却されたライプニッツの方法が、熱力学哲学と結合されて「ランドネ(遠歩き)の方法」と定式化される道筋には一種の感動を覚える。セールが極寒の地で見つけたのは「炎」。世界=システムの「縁」を描くのではなく、カオスと秩序がランダムに混交し揺らめく姿を描くこと。2021/10/22
