出版社内容情報
1985年メディシス賞受賞 ギリシア哲学以来の言語(ロゴス)中心主義によって葬り去られた人間の感覚世界の復権とその全面的開花への展望を語り,原初の活力に溢れた文明の再生をめざす。
内容説明
ギリシア哲学、キリスト教、デカルト的理性に通底にする言語=視覚中心主義にノンを唱え、文明によって失われた感覚世界(触覚・味覚・嗅覚・聴覚)の復興による原初の活力に溢れた文明再生への展望を語りつつ新たな〈科学〉時代の到来を予告する。’85メディチ賞受賞。
目次
ヴェール
ボックス
テーブル
探訪
歓喜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひばりん
12
ミシェル・セールのエッセイ体による哲学書。のっけから「炎上する船からの脱出口にはさまって、頭は極寒、下半身は黒焦げ」という彼の実体験からはじまるのだから、面白くない訳がない。上半身と下半身の分断の最中に、デカルトの二元論は正しいとしても松果体の位置は違うんじゃないか云々と省察していたというに至っては、ほとんど噺家の話芸だ。フーコーやボードリヤールを意識したと思われるパノプティコン論なども刺激的。ワインを中心とした味覚についての省察も楽しい。セールへの入り口に最適の書ではないか?2021/10/02
ナナ
1
「私にとってただ一つ惜しむらくは」A MON SEUL DESIR p.69 クリュリーの貴婦人と一角獣のタペストリー、第六番目の謎解き。 「濃密で青い身体は、炎の舌を散らして燃えている。それほ自分の宝石を譲り、テントのように空になり、宝石のなくなったことを惜しんでいる、すなわち愛惜(desir)である。この語は十五世紀末においては、ラテン語的意味、すなわち「愛惜」という意味をより強くもっており、「欲望」という現代の意味はまだもっていなかった。」p.692016/09/12