出版社内容情報
現代芸術が執拗に我々の疎外された世界を糾弾して倦まないのはなぜか。欧州過去五世紀の歴史的鳥瞰を通して,この滑稽かつ不気味なるものの本質を抉る。口絵28頁。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
午後
3
不気味なものや滑稽なもの、恐ろしいものや不快なもの、さまざまな要素を付与されながら曖昧に用いられてきた「グロテスク」という言葉の変遷を辿りながら、この語が創作態度や作品内容、美的範疇にまたがる概念であり、「疎外された世界」という一つの構造であることを示す野心的な試み。引き合いに出される造形芸術は、ラファエロのグロテスク模様から、ボスとブリューゲル、カロ、ゴヤ、アンソール、シュルレアリスムの絵画まで。2022/01/16
ルートビッチ先輩
3
グロテスクなものがあらわれるとき、深淵が感じられ、世界が疎外される。それは日常世界、親密なものが奇異なものとなること(verfremdung 異化)である。例えば動物と植物が混ぜ合わせられることによって、言語の遊びによって異質なものが組み合わされることによって、信じられていた範疇が揺さぶられる。これが日常に打撃をくわえることであるならば、本書の後盛んになる道化研究などにもつながる(事実コメディア・デラルテに多く言及している)。また日常世界から離れようとするという意味でグロテスクは遊戯的でもあり、2015/02/17