内容説明
ポストメランコリー型時代の気分障害の本質。今日の気分障害の臨床は、若年事例や治療抵抗性事例の増加、過量服薬、リストカット、病名依存など、さまざまな困難を抱え込んでいる。そのような現代の気分障害を象徴する「双極2型障害」に焦点を合わせ、回復への里程標とする。
目次
第1章 気分障害略史―メランコリーから双極2型障害まで
第2章 軽躁というデーモン
第3章 臨床プロフィール
第4章 治療の指針
第5章 同調性の苦悩
第6章 混合状態―交錯する躁と鬱
終章 うつ病新時代
著者等紹介
内海健[ウツミタケシ]
1955年生まれ。精神科医。1979年、東京大学医学部卒業。現在東京藝術大学保健管理センター教授。専攻は精神病理学。日本精神病理学会理事、日本病跡学会理事、日本うつ病学会双極性障害委員会委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ろくべえ
8
★★★★★ 一般(特に当事者、治療者、支援者向け) 単に病識を得る為の領域を越えて、当事者の苦しみ、治療者の在り方、病気の原因となり得る社会病理までをも理解するのに深い助けとなる内容で、これまで疑問を抱いてきた多くの事がこの本のおかげで整理でき納得できた。特に軽躁、双極スペクトラム、混合状態、DSMの落とし穴についての記述は当事者の家族として振り回されない為のパワーツールになると感じた。こんなにも当事者の苦しみや困難に寄り添った視点と確かな臨床感覚で書いてくれる精神科医がいるということに励まされた。2016/05/04
ゆいまある
4
旧版よりも、一般の人に読みやすい内容。双極性障害といっても、極性は目立たず、混合状態を見落とすななど、臨床に役立つ内容。佐々木司先生達の「私信」がまた興味深い。内海健先生の他の著者も読み直したいと思いました。2014/08/12
陸奥☆独り旅
4
双極性障害の中でも、Ⅱ型という「躁が軽い」類型に関心が高まっている。躁が軽いので、「ハイ」だとか「キレている」と本人は感じ、病識が薄い。仕事のパフォーマンスもこの状態の方が上がったりして、患者はその状態を治療で失いたくないとさえ思うそうだ。しかも精神科にかかるときは「うつ」の状況でかかるので、躁転したときは「うつが軽快した」と医師に話し、精神科医も判定が非常に困難だ、問題の解決が遠のきがちになる。内海先生の筆致は丁寧で、素人にもわかりやすい。この障害の存在をきちんと知っておくことは、とても大切だ。2014/05/01
もJTB
4
躁鬱だと超あるある本。単極型うつや境界性障害との違いに学ぶところ多し。気分障害同士でも症状によってうつの感触が全くちがう。その事がディティールで語られてる。とても感心。うつ観(人生観みたいな語用)も症状により千差万別いろいろなのだなぁ。有用な本。2013/12/08
Pery
2
図書館の社会人用書斎にて読了。名著である。手元において繰り返し読みたい。大きな物語あるいは規範意識が薄れた現代人にとって、何かに対抗することや、何かから逃走することにより自己を確認することはもはやできない。瞬間に生きる現代人の黙示録。2016/06/18