内容説明
近代神経学の創始者シャルコーと19世紀末という時代を、大ヒステリー=大催眠理論を論じた講義録を中心に読み解き、今日的問題にまで敷衍する評伝と論考の試み。数多くの医学者、思想家、文学者に影響を与え、多領域に「シャルコー的問題」を投げかけつづける巨人を現代的視座からとらえ返す。
目次
第1章 すべてはシャルコーからはじまる
第2章 男性ヒステリーとは?―『神経病学講義』より
第3章 シャルコー神経病学の骨格
第4章 大ヒステリー=大催眠理論の影響―フロイト・ジャネ・トゥーレット
第5章 シャルコーとサルペトリエール学派
第6章 『沙禄可博士神経病臨床講義』―『火曜講義』日本語版の成立と三浦謹之助
第7章 シャルコーの死とその後
第8章 シャルコーと十九世紀末文化―ゴッホのパリ時代と『ルーゴン=マッカール叢書』
終章 ヒステリーの身体と図像的記憶
著者等紹介
江口重幸[エグチシゲユキ]
1951年生まれ。1977年東京大学医学部卒業。精神科医。長浜赤十字病院、都立豊島病院を経て1994年から東京武蔵野病院に勤務する(現在研究教育部長)。精神科臨床と併行して、医療人類学と精神医学史に関心を持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きつね
1
自然主義やシユルレアリスムがでてくる後半が大変面白うござった。シャルコーその人の評価についてはエランベルジェよりも寛容。どちらが公平な態度なのかぼくにはちょっとわからない。2012/09/18
さとし
0
遺伝=変質理論、神経=筋・情動表出理論、自動症理論、動物磁気=催眠理論、ヒステリー理論、連合心理学など、シャルコーの考え方の大枠が分かりやすく解説されていた。「(神経病もしくは関節炎)家系」が素因としてあり、そこにたまたま生じた外傷が「誘因」となり発症するという考え方は、エピゲノムを連想する。シャルコーの観察眼の鋭さが伝わってきた。2021/07/29