出版社内容情報
憲法改正や国防軍、または日米安保依存だけが、日本の軍事戦略ではない。護憲派の立場から、九条の思想が軍事戦略として他国と渡りあえるだけの根拠をもつことを明らかにする。
内容説明
国防軍構想や日米安保への依存だけが日本の軍事戦略ではない。憲法九条の「制約」を「優位性」に変えれば、九条は軍事戦略として根拠をもち、世界をより平和な道へ導くことができる。
目次
第1章 九条の軍事戦略が必要とされる理由(尖閣諸島をめぐる対立が新戦略を求めている;国民は自衛隊を求めている!? ほか)
第2章 戦後日本に軍事戦略は存在したのか(日米安保依存戦略の誕生;対米依存が定着する六〇~九〇年 ほか)
第3章 九条の「制約」は「優位性」に変えられる(九条は世界基準の軍事戦略;「武器の制限」が日本を優位に導く ほか)
第4章 九条の軍事戦略を語ろう(専守防衛の基本にかえれ!;失敗しない経済制裁の戦略 ほか)
第5章 日米安保条約をどうするか(九条の軍事戦略は日米安保と矛盾する;安保の現状を変える二本立ての戦略を)
著者等紹介
松竹伸幸[マツタケノブユキ]
1955年生まれ。ジャーナリスト、日本平和学会会員。専門は外交・安全保障(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
31
九条の「制約」を「優位性」に変える。これが著者の主張。具体的には、1.専守防衛を本来の意味に帰る、2.経済制裁を効果的に使う、3.中国とも安全を共有する軍事戦略を。やや現実には難しいかなとも思うが、現状追認の思考からの脱却というスタンスは評価できる。2019/09/14
みのゆかパパ@ぼちぼち読んでます
24
日本の軍事戦略と言えば日米同盟の強化しかないように語られ、その制約となっている9条を変えようという論調が高まるなか、護憲派の立場から9条のもとで国を守る戦略を持つことの必要性を説いた一冊。「憲法9条」と「軍事戦略」という組み合わせに「?」だったが、提示されているのは、9条の平和主義を生かした外交戦略をすすめつつ、自衛隊の活用も含めて憲法の枠内でとりうる独自の軍事戦略を練り上げるという現実的なもの。9条の是非を考える上でも示唆に富む内容で、憲法改定が現実問題となっている今だからこそ多くの人におススメしたい。2013/05/17
Gatsby
19
まさにプラグマティックな9条論。ここのところの改憲論は、9条を避けて改憲の手続きのみをまずはターゲットにしているようだが、まじめにどうしていくかを考えるならば、それを考えるもとになるものが必要だと思う。そういう意味では、今、この本が書かれたことには大きな意味があるだろうし、誰かが書く必要があったのだろう。現実をしっかりとみて、したたかな考察もしながら論を進めていくので、内容は非常に理解しやすいし、どういう立場にいる人にとっても、無視できない本になっていると思う。多くの人が読まれることを期待したい。2013/05/28
ふろんた
16
護憲しながらも、専守防衛型の軍事戦略を説く。書いてあることは、概略的なことなんだろうけど、もっと勉強しないと難しいな。2013/11/29
白義
14
9条と軍事戦略は一見矛盾する印象を受けるが、まさに9条の自己拘束を国家のイメージ戦や軍事外交の一環として捉えることで、日本ならではの防衛政策を導こう、という新鮮な主旨の本。外交、国際法、軍事など比較的広い視野から集団的自衛権や平和に関する法の歴史や論点を描いている。また、日本の護憲派には珍しく、憲法9条と専守防衛の理念から肯定できる軍事力の内実にまで踏み込んでいるのはなかなか興味を引く。さすがにまだまだ防衛リアリストの目を引くには物足りない感もあるが、実に優れた方向性を打ち出した一冊だ2014/08/24