出版社内容情報
大正から昭和にかけて、『台湾日日新報』に連載された日本人無名画家・国島水馬の傑作風刺漫画を題材に、デモクラシーと植民地政策の変遷、当時の台湾の社会・政治・風俗を読み解く。
内容説明
大正期、一世を風靡した風刺漫画。当時、日本の統治下にあった台湾においても、内地からやってきた無名画家・国島水馬によって新聞風刺漫画が初めて導入された。大正デモクラシー全盛期からその終焉まで、激動する台湾にはその素材となる矛盾と軋轢が溢れていた。約二十年間にわたって描かれた風刺漫画に映し出された植民地の実像。
目次
序 「大椀」に乗り込んだ漫画家
第1章 大正デモクラシー・イン・台湾
第2章 富み、また悩みもする蓬莱島
第3章 震撼と共感の関東大震災
第4章 皇太子がやってくる―開明の世へ
第5章 牙を剥く台湾
第6章 “奇妙”な台湾
第7章 メディアと便利さの狂想曲
第8章 大正デモクラシーの終焉
著者等紹介
坂野徳隆[サカノナルタカ]
1962年生まれ。英字新聞ジャパンタイムズ記者などを経て、93年にミステリー小説『ドナーアニマル』(実業之日本社)でデビュー。2001年より台湾などに居住しながら取材したノンフィクション作品を発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nizimasu
8
日本統治下の台湾というのはウェイダーシェンのプロデュースの映画やホウシャオシェンの映画でも描かれているが、かつて台湾の新聞で健筆を揮っていたのが内地人(日本人)の国島水馬という風刺漫画家だという。細かなプロフィールはわからない人物らしいが日清戦争で割譲された台湾の時事問題を風刺にこめていたマンガを数多く残している。そのマンガは生き生きと当時の世相を語っていて台湾のインフラ開発や昭和天皇(当時皇太子)の訪問なども興味深い。その後の霧社事件なんかにつながるような少数民族の描写なんかはまるでちび黒サンボみたいだ2015/12/05
そうたそ
7
★★★☆☆ 台湾の歴史というのは、自分の興味の範疇にはないものの、ただ何となく知ってみたいなという欲はあった。ただ、歴史というのは興味がない者にとっては、格別とっつきにくいものである。知らない固有名詞ばかりが並び、当時の社会的背景なども全く分からない。そんな時に当時の風刺漫画というのは非常にその国の歴史を知るには良い導入になると思う。滑稽に描きながらも、当時の国の社会的本質を巧妙についているという点で特に。日本統治下の台湾について軽く知ることができた点では個人的には非常に有意義な読書であった。2013/07/26
Haruka Fukuhara
5
色々と諷刺画が載っていて面白い。日本統治時代が等身大で描かれているようで興味深かった。2017/03/21
つんたお
5
日本統治下の台湾の姿を、当時の台湾の新聞に連載された風刺漫画から考察しています。 風刺漫画から、植民地の実情を読み解くという切り口は大変新鮮で面白かったです。 新書だから仕方ないのかもしれませんが、この本に掲載されている漫画が小さくて、見づらかったのが残念でした。 2015/05/04
こーき
3
台湾が内地への複雑な感情を持ちながらも、成長していく様が風刺画を交えながら紹介している。 ただ、風刺画という観点でまとめているので、テーマに一貫性がなく、あまり印象に残らなかったのも事実。2013/01/06