内容説明
レヴィ=ストロースの壮大な思想は、安易で図式的な理解を拒むが、彼独特の「世界との接し方」を見ることで、構造主義と呼ばれる「ものの見方」にまで通底する、思想家の仕事の核心に肉薄する意欲作。百年を超える生涯を通じて、彼は何と闘ってきたのか。現代世界に生きることのモラル、もうひとつの豊かさの思考。
目次
序章 ひとつの長く豊かな人生
第1章 学生運動家レヴィ=ストロース―社会主義のモラルを求めて(「社会主義学生集団」事務局長;西欧の外へ)
第2章 批判的人類学の誕生―修業時代(ブラジルへ;ニューヨークで)
第3章 野生の思考へ向かって―模索の時代(神話研究への助走;ユネスコと野生の思考)
第4章 もうひとつの豊かさの思考―神話論理の森(神話の新世界の踏査;双子であることの不可能性)
著者等紹介
渡辺公三[ワタナベコウゾウ]
1949年東京都生まれ。東京大学大学院修士課程修了。博士(文学)。現在、立命館大学大学院先端総合学術研究科教授、研究部長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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翔亀
39
【始原へ7】レヴィ=ストロースは100歳まで生き多くの著作を問うた。2009年に亡くなる直前にちょうど刊行された本書は、小冊子ながら全著作・論文リストを付し格好のオマージュの書となっている。レヴィ=ストロースの解説書は数多く、これはひとえに構造主義が理論的に難解なこともあるだろうが、読者に大きな刺激を与えるためであろう。本書は理論的な解説より、彼の100年にわたる思考の流れを辿ることに重きを置いていて、膨大な著作群を貫くその全体像をつかむのに有用だ。特に南米に民族調査に渡る(「悲しき熱帯」←これがただの↓2021/02/16
mitei
26
結構難しかったが、人類学者が最初社会主義者だったというのが分かった。2011/10/26
佐島楓
13
レヴィ=ストロースの視点のユニークさには驚かされる。内田樹先生のご本で存在を知ったので、先生にも感謝したい。やはり邦訳本が読みたいなあ。2011/08/29
Z
12
あとがきを読んで、レビストロースの思想は別の本でまとめたので、この本では別のスポットに焦点を当てたとあり、読む順番間違ったと思ったが、若い頃、社会主義運動してた頃のレビストロースの論文や文章に触れられ、それが如何に晩年まで持続変遷したかの観点から纏められた評伝で、けっこう面白かった。若い頃に税金に関する政策提言して採用されてたなんて、知らなかった。が読みたかったのはレビストロースの思想なので別の本を読まないと。2018/03/12
ハチアカデミー
10
B レヴィ・ストロースの若き時代を知ることの出来る良書。思想や業績を知る書籍は他にもあるが、本書ならではの読みどころがしっかりある。もちろん生涯の思想的遍歴も知ることができた。ヤコブソンを始めとした言語学への関心は、彼の「構造」というタームに強く影響を与えている。おそらくブリコラージュにも。最後の「双子であることの不可能性」が特に面白い。「共感に満ちた無理解」という他者を言語化する。なんとか自分たちの側に引き込むために、神話が作られる。その行いはどれだけ人類が進化しても変わらない。写真が鮮明なのも◎2012/07/05