出版社内容情報
「ジプシー」は世界で1,000万人以上との推定もある一方、同じ起源を持つ民族とする説は退けられつつある。ではジプシーとは誰か。最新の研究を踏まえ、その実像、歴史、文化等を描く。
内容説明
世界に一〇〇〇万人のジプシーがいるとの推定もあるが、その実態は不明な点が多く、作られたイメージが流布している。事実、インド起源の民族集団とする説について、最近の研究では、多くの問題点が指摘されている。では、“ジプシー”と呼ばれる人びとは誰なのか？ジプシーと主流社会との関係を重視しつつ、呼称、分布、歴史、文化など、全体像を描く。
目次
第１章 ジプシーと呼ばれる人びと（人口と分布；ジプシーとは誰か ほか）
第２章 ジプシー像の変遷（ヨーロッパへの登場―「エジプト人」として（一五世紀）
セルバンテスの『ジプシー娘』（一七世紀はじめ） ほか）
第３章 歴史―主流社会のはざまで（インド起源説の現段階とその意味；バルカン半島への進出と定着 ほか）
第４章 ジプシーの現在―いくつかの事例（バルカン半島のモザイク模様；旧チェコスロヴァキアのロマ問題 ほか）
第５章 日本とジプシー（日本人のジプシー認識；サンカは日本のジプシーか）
著者等紹介
水谷驍［ミズタニタケシ］
１９４２年北海道生まれ。京都大学経済学部卒業。東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。東京大学教養学部非常勤講師。ジプシー／ロマ懇話会を主宰（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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bapaksejahtera
14
ジプシー、ツィガーヌ等様々に呼ばれた集団が、15世紀頃中東から欧州に流入して以来の歴史を、多くの国々でのケースに渡り細かく紹介する。薄い新書を超えて記述は詳細である。彼らの遠い起源が印度にある事は言語的にも明らかであるが、地域毎にその社会的性格や人的形質は流入先の国々の影響を受けて多様。一様に差別虐待の歴史を持つ。ロマという彼らの一部の自称に一律に呼び替えても、問題解決には全くならない。ジプシー達は東欧社会主義の崩壊以降更に混乱を極めた。著者は起源論や社会論の難問に回答を示し得ないが、難問は十分理解できる2022/08/04
塩崎ツトム
4
今でも多くのジプシー（ロマ人）がヨーロッパ亜大陸をさ迷っているのだけれど、彼らの流転の原因はその特異な生活習慣というよりも、なんというか差異と取り繕った歴史を求める多数者の悪癖にある。ここんところ、まんま、日本の「サンカ」と同じなんだよねぇ。本書でも言及しているけど。2014/06/26
富士さん
3
再読。本質主義によらず、人々の相互作用として生み出される社会的事実として民族を捉える、こういう視点、大好物です。ジプシーとは、それを示すには格好の題材だと思います。ただ、本質を語らないスタンスから社会的弱者が政治的な反攻を行う際の橋頭堡を得るのは不可能だということは気にしてもいいのかなと思いました。みんなバラバラでよくわかりませんでは、一度固定化した社会的事実を揺り動かすのは難しい。永遠に更新されていくべき学問的正しさと一点の事実を固定化する政治的正しさは別物であって、ともに用途があるのかもしれません。2014/11/24
de sang-froid
2
第三章まではジプシーの定義、ジプシー像の変遷、歴史が描かれている。興味深かったのは第四章のジプシーの現在の項で、ヴラフ系ロマの事例には正直肝を冷やした。また第五章の山窩については日本人研究家ならではの内容かと思う。人にランクや線引きをするという行為は、人をモノとして扱うことでもある。わからない相手を切り捨てるのではなく、知ることによって支配するというやり方もあるかもしれない。2009/07/12
こぽぞう☆
1
ジプシーの起源。インドからの流民？封建制から資本主義社会への変化についていけなかった貧民？結論は敢えて出さない表現の本であった。サンカについては以前何冊か読んだことがあったので、インド起源はないとはおもうが、社会の変遷の中で生まれた流民という意味では共通点があると思う。2015/10/18
