平凡社新書<br> 村上春樹論―『海辺のカフカ』を精読する

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平凡社新書
村上春樹論―『海辺のカフカ』を精読する

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  • サイズ 新書判/ページ数 277p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784582853216
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0291

出版社内容情報

日本と海外で大ヒットした『海辺のカフカ』に、<癒し>や<救い>を感じた読者も多い。しかし本当にそういう内容なのか。気鋭の文芸評論家が同書を精読し、村上文学の本質を明らかにする。

内容説明

日本、アメリカ、中国等で大ヒットした『海辺のカフカ』。カフカ少年とナカタさんのパラレルな物語に“癒し”や“救い”を感じた人も少なくなかった。けれども、本当にそういった内容なのだろうか?丁寧なテクスト分析によって、隠された構造が浮かび上がる。暴力が前面に現れつつある「九・一一」後の世界に、記憶と言葉の大切さを訴える、渾身の村上春樹論。

目次

第1章 『海辺のカフカ』とオイディプス神話(オイディプス神話という主題;『オイディプス王』の物語 ほか)
第2章 甲村図書館と書物の迷宮(図書館という母性的空間;なぜ『千夜一夜物語』を最初に読むのか ほか)
第3章 カフカ少年はなぜ夏目漱石を読むのか―甲村図書館と書物の迷宮2(カフカ少年は『坑夫』と『虞美人草』を読む;「近代教養小説」という視点 ほか)
第4章 ナカタさんと戦争の記憶(ナカタさんの出自;記憶の欠落と識字能力の喪失 ほか)
第5章 『海辺のカフカ』と戦後日本社会(カーネル・サンダーズが語る「天皇の人間宣言」の虚偽;「生き霊」と『菊花の約』の意味するもの ほか)

著者等紹介

小森陽一[コモリヨウイチ]
1953年東京都生まれ。北海道大学文学部卒業。同大学院文学研究科博士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

256
著者は現在、東京大学大学院教授で、夏目漱石をはじめとする日本近代文学研究の第1人者の1人。また「9条の会」事務局長を務める。本書は、『海辺のカフカ』論だが、まずは物語の基軸であるオイディプス神話をフロイトの理論を用いて構造解明してゆく。そして、「女性が性的欲望を抱くことが罪」であり、根底には「女性嫌悪」があると述べる。また本書に内在する「歴史の否認」、「思考の処刑」、あげくは村上春樹の「転向」をも厳しく糾弾していく。村上春樹ファンにはとうてい容認できないだろうが、1つのテクスト論として傾聴に値する書物だ。2012/09/08

ロマンチッカーnao

19
海辺のカフカの読後の余韻に浸りたくて読んだ本。そっか、9.11の頃だったのか、この作品は。この作品を読んで癒やしや救いを感じる人が多い。しかし、中には暴力的と感じる人も居るようだ。それはこの作品の発表の時期による。なるほどと思うことも多い。しかし、本質的にガイドブックもレビュー集も評論集も本編を超えるものではないし、あくまでも、余韻を楽しむ程度のものだと思う。実際に読んで自分が何を感じるのか。それが大事で、それが間違っていても、読んだ本人がそう感じたならばそれが正解だと思う。本は作者と読者のもの。2023/11/03

服部

11
作中に登場するカフカの小説や『千夜一夜物語』などと作品の関係性を炙り出す論は面白かった。特に、研究対象である夏目漱石の作品についてはかなり力を入れて論じていたように思う。『海辺のカフカ』から広げて歴史・精神分析・文学など幅広い観点でここまで書かれた新書はなかなかないと思うので貴重な一冊。ただ、女性嫌悪や昭和天皇などはちょっと極論すぎるかなと感じた。2021/06/12

空箱零士

10
「追い詰めたぞ、悪しき〈処刑小説〉を書いた男、村上春樹! 私は貴様を断罪する!」「断罪」「断罪だ! 私達がかつて犯した戦争の罪を〈いたしかたのないこと〉にすり替え、その罪を佐伯さんや岡持先生におっかぶせ、象徴的に処刑することで、歴史の忘却を〈癒やし〉に偽装したミソジニスト! 貴様の行いは、数万年かけて私たち人類が構築してきたタブーを犯す行為に他ならないのだ!」「〈私〉たち」「あ?」「何でもない。続けてくれ」「……言い逃れは出来ないぞ、村上春樹! 貴様の罪は貴様の引用したテクストにも列記として顕れている!」2016/12/16

羊男

7
★★★★2023/10/11

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